伝統建築を学ぶ学生が佐渡島内の寺社を修復。 文化の保存・継承に取り組む。
新潟県佐渡市にあるSADO伝統文化と環境福祉の専門学校は、伝統建築学科で宮大工を育成しています。そこで学ぶ学生の95%は新潟県外から入学してきています。この学科では実習として本物の社寺の修復等を行っています。学生は実践的に学ぶ事ができると共に、地域の課題解決にもつながっています。その教育内容等が評価され厚生労働省の各都道府県応援事業「地域発!いいもの」に選定されました。また11年連続で技能五輪全国大会に選手を輩出しています。
どのような経緯で社寺の修復に取り組むようになったのか、またその際に心かけていることなどを、SADO伝統文化と環境福祉の専門学校 副校長 後藤 唯さんと、伝統建築学科 学科長 井土英樹さんに伺いました。
佐渡の寺社の修復を行い氏子・檀家の方々から喜ばれる
― 島内の寺社の修復に取り組むようになった経緯を教えてください。
後藤 当校は2008年に「島内に必要な人材を育てる教育機関が必要」ということで開校しました。その一つが伝統建築学科。佐渡には多くの社寺があり、現存する能舞台の数は全国の3分の1を占めるほどです。しかし少子高齢化などで氏子や檀家の数も減り修繕費用を捻出することが困難になり、また、離島ということで島外から宮大工に来てもらうことも難しく、修復が立ち行かなくなって破損しても手をつけられない状態でした。
井土 開校当初は認知度も低く修復の依頼はなかったのですが、ある寺社の修復を機に声がかかるようになりました。農民一揆を起こして処刑された方々を義民として祀った建築物(義民殿)が島内にありますが、長年放置されていました。寄附を集めて修復することになった際に当校に声がかかり、その修復の取り組みが2012年から2013年にかけて地元の新聞に掲載されました。それを読んだ市民の方々から自分の地域の寺社も修復してほしいと依頼が入るようになりました。それ以来、毎年1~2ヶ所の修復に携わっています。
― 修復を通して学生に何を学んでもらいたいですか?
井土 傷んだ柱の根本を切って新しい部材と取り換える根継ぎや、床の張り替え、階段の架け替えなど、建物ごとに対応が異なり現場でしか学べないものがあります。それを通して先人達の技と心、それらのひとつ一つを体感してもらいたいですね。いずれは国宝に関わる仕事がしたいという夢を持っている学生もいるので、その技術を修得できるように指導しています。
後藤 寺社は信仰の想いが集まる場所。そんな地域にとって大切な建築物を、若い学生が修復してくれることに地域の方は感激されるようです。
井土 施主さんの顔が見えることは、「もの造り」の原点。良い仕事をして反応を直に感じ取ることができる最高の教育環境と考えています。数年にわたって修復することもありますので、地域の皆さん一緒に食事会をするなど交流を深めています。