伝統建築を学ぶ学生が佐渡島内の寺社を修復。 文化の保存・継承に取り組む。
地場木材を使用した社殿を造り神社に奉納
― 佐渡産の木材を利用して社造りを行っているそうですね。
井土 2020年度からはじめたのですが、卒業制作として「一間社流造本殿」を造っています。これは宮大工を目指す学生にとって学んだ技術を発揮できる貴重な経験です。また材料には佐渡産の「アテビ(アスナロ)」を使用しています。木材としては流通できなくても形を変え、島外に奉納されることで活用されることは森林資源の保護・育成にもつながります。
後藤 制作後は業界紙に告知し、全国からこの本殿を奉納する神社を募り、落成式を行い奉納しています。昨年は岐阜県の神明神社に奉納しましたが、宮司さんも「素晴らしい出来栄え」と喜んでくださいました。制作した学生も「精魂こめた社殿を奉納できて大変光栄で、今後の励みになります」と言っていました。
井土 これらの伝統技能の継承への取り組みが評価され、厚生労働省から「地域発!いいもの」の認定をいただきました。将来的には佐渡市にある国宝や重要文化財を修復する際にも学生が関わることができればと思っています。そんな佐渡の文化保存・継承の集大成とも言える機会に恵まれたらうれしいですね。
本物の実習で技術を磨き、11年連続技能五輪全国大会に出場
― 11年連続で技能五輪全国大会の選手に選ばれているそうですね。
井土 はい。今年度は伝統建築学科の在学生3名が、建築大工職種の新潟県代表選手に選ばれました。これで11年連続の出場。その好成績の理由としては、全国でも数校しかない3年制課程というところが大きいと思います。宮大工の基礎を3年かけてじっくりと学ぶ。しかも本物の伝統建築に触れることでモチベーションが上がる。それらが複合的に絡み合うことで、技術が向上して良い成績につながっていると思います。
後藤 寺社には氏子や檀家の方々の想いが詰まっています。それに触らせてもらい修復していく時の緊張感は貴重な経験。模型ではないので失敗は許されませんからね。それも技術力を上げる要因になっています。このように本物で学べることから、沖縄から北海道まで全国から入学してきます。そういう分野を学びたい方にとっては魅力的な“オンリーワンの学校”なのではないでしょうか。
SADO伝統文化と環境福祉の専門学校
新潟県佐渡市千種丙202-1
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https://www.sado-nsg.com/
新潟県内に29の専門学校や大学等を運営しているNSGグループの中の一校であり、佐渡市内で伝統建築について技能と知識の習得、職業教育を行っています。また佐渡市には36の能舞台、約550の社寺、新潟県唯一の五重の塔があり、多くの伝統建築物が点在しており、この環境を活かし本物の伝統建築物を修理するなどの実学教育を行っています。