若くして伝統あるホテルレストランのシェフに大抜擢。 夢は新潟を「美食の街」にすること。
ホテルイタリア軒 / 池田 将人

2022.06.20 Mon
PROFILE
池田 将人
ホテルイタリア軒 マルコポーロ シェフ
1994年、十日町市生まれ。幼少期より料理に関心を持ち、高校時代に料理人になることを決意。高校卒業後は調理師専門学校に進学。在学中、ホテルイタリア軒内レストランでキッチンスタッフのアルバイトをして過ごす。その経験も見込まれ、卒業後の2014年にホテルイタリア軒へ就職。2018年10月に開催された「にいがたのフランス料理コンクール」で優勝に輝く。現在は、「リストランテ マルコポーロ」のシェフとして活躍中。
小さな頃から料理が好きで、高校時代に料理人になることを決意。
ホテルイタリア軒に勤めながら料理コンクールに挑戦し見事優勝する。
若くして明治時代から続くホテルのレストランを仕切るシェフに大抜擢。
伝統の味を受け継ぎながら、新しい味の研鑽に励む。
スペインのビルバオでの研修で地産地消の素晴らしさに開眼。
地元の農家をまわり地産地消メニューの開発に取り組む。
夢は新潟を世界から注目される「美食の街」にすること。
そんなチャレンジ精神旺盛な池田さんが、食への熱意を語る。

伝統を受け継ぎ、そして新しい伝統を作り出す。

25歳にしてマルコポーロの責任者としてシェフに抜擢された時はどのような思いでしたか?

シェフになる前は、「早くなりたい」と思っていました。でもいざその立場になるともちろんやりがいは感じていますが、見えていなかったことが多く思っていた以上に大変だということに気づきました。お料理やおもてなしだけでなく、スタッフへの指導や、メニューのコスト管理など運営にかかわる部分も必要な仕事です。また、当然シェフとして自分が味の最終決定者になるので、「この料理は本当においしいのか?」「もっとおいしくできるのでは?」と自問自答する日々です。

伝統あるホテルのレストランを任されたプレッシャーはありませんでしたか?

当然ありました。150年近くの歴史がある、日本の洋食の草分けですからね。料理一皿一皿に、その歴史が刻まれている。「シェフが変わったから、日本で最初と言われている伝統のミートソースの味が変わった」と思われてしまうかもしれない…その怖さは感じました。

でも新しい伝統を作っていきたいという思いもありますよね?

もちろんです。伝統は大事にしつつ、今来てくださるお客さまに喜んでもらえる料理を提供したいという思いで作っています。新しい伝統を作るのがシェフとしての使命でもあります。そういった意味でも、代々伝わるミートソースやデミグラスソース、カレーなどの伝統の味を守りつつ、「現代のお客様に美味しいと思ってもらえるか…」と常に頭の片隅では考えています。

※撮影のためにマスクを外しています。

地産地消にこだわり、新潟の食の魅力をアピール。

地産地消メニューに力を入れていますが、そのきっかけは?

数年前に会社の研修でスペイン バスク地方のビルバオに行かせてもらいました。ビルバオはかつての工業都市としての活気を失い、 さびれた街だったのですが、90年代から文化芸術の振興による都市再生に取り組んできました。その中には食文化も含まれており、今では世界が注目する美食の街になっています。バスク地方の中でも、三つ星のレストランが一番多い街です。研修を通して知ったのは、向こうでは地産地消が当たり前ということ。「なぜ、わざわざ他の食材を使うのだ」と言われました。さらに「フォアグラとかキャビアとか、世界中に高級な食材はいくらでもあるが、一番素晴らしいのは、その土地で採れた食材だ」と。それを、「その土地の調理法で作った料理がいちばんだ」ということを学びました。その価値観に共感して、世界中からビルバオに旅行にくる人がいる。それを聞いてから地産地消を重視するようになりました。

 

帰国後に地産地消のメニュー開発に向けてどのような取り組みを?

地元で食材を作っている生産者の方を訪ね歩くようになりました。SNSなどで情報を集め、直接「行ってもいいですか?」とアポをとり、訪問しています。最近も越後姫というイチゴを作っている農家を訪ねたのですが、作業しやすいような高さにするために水耕栽培されることが多い中、土耕栽培をされているそうで、甘みや香りが違いました。さっそくコースのデザートで使わせていただきました。このように農家さんとつながり、新潟の食材を使った料理を極めていきたいですね。

越後姫のメニューでは、どのようなところにこだわりましたか?

新潟の食材は、そのまま食べてもおいしいので、それをいかに調理して、さらに味わい深くするかがテーマです。越後姫のアイスクリームを作りましたが、余分な味付けはせず、そのまま越後姫を食べているような味にこだわりました。試行錯誤を繰り返し、納得する一品ができました。お客さまから「おいしい」と言っていただけた時は最高に嬉しかったです。

食育イベントを通じて、農業の発展に貢献したい。

今までにない新しい企画を考案中だそうですね

はい。それは「食育イベント」です。子どもたちに地産地消を学んでもらえたら、というのがきっかけで。例えば子どもたちに収穫体験をしてもらい、このレストランでその食材の調理見学や、試食会などができたらおもしろいと思っています。

 

食育を通して何を学んでほしいと思ったのですか?

健康的なものを食べることもそうですが、地元の食材の魅力を知ってほしかった。なぜなら、将来の新潟を背負っていく子どもたちが、地元の食材の素晴らしさを理解しなければ、農業の発展はないと思ったからです。そして「自分たちがすごく良いものを食べているんだ」という誇りを持ってほしいですね。

生産者のモチベーション にもつながりますよね

食育によって、子どもの頃から「新潟ではすごくおいしいものが多いな」、「それを作る農家さんは大変だけど頑張ってくれているんだ」、「ありがとうね 」と思うようになれば、農家さんも「もっと頑張るぞ」という気持ちになってくれるのでは思っています。

新潟を世界が注目する“美食の街”にするお手伝いを。

池田シェフが追い求める理想の料理とは?

もともとフレンチをやりたくてこの世界に入ったのですが、本物のフレンチはやはりフランスの食材を使って作るものだと思っています。今私が取り組んでいるのは、フレンチではなく“洋食の技法を使った新潟料理”です。シェフになってから月替わりで地産地消のメニューを始めました。この街、この店にしかない料理を追求していきたいですね。それが新しい伝統を築く、ひとつの試みなのかもしれません。

シェフとしての将来的な夢はなんですか?

新潟市を日本のビルバオのような街にしたいですね。おいしい食材・料理を求めて、世界中から人が訪れ、その一つとして当店で食事をしていただけたらうれしいですね。でもそれは1人でできることではありません。NSGグループの食関連の法人などをはじめ、他のレストランや農家さん、行政機関や観光産業の方々など地域の皆さまとも連携して、「美食の街・新潟市」をアピールしていきたいですね。イタリア軒がこの地に創業してまもなく150年になります。新潟に根付くホテルとして、「食と文化の発信基地」をコンセプトに掲げています。私の夢も同じ方を向いているので、その達成に向かってチャレンジしたいですね。

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