学校から地域へ~地域とともに描く中学校部活動の新たなかたち
6月に入り、夏の全国大会に向けて、中学校や高校の部活動も一段と活気づいています。地区大会や県大会が各地で開催され、生徒の皆さんにとっては、これまでの努力の成果を発揮する大切な機会であり、学校生活においてかけがえのない思い出が生まれる時でもあります。
一方で、現在、従来と同様の部活動のあり方を維持することが難しくなってきており、スポーツ庁はまず中学校から地域クラブ活動へと移行を推進しています。その背景には、教員の長時間労働の是正を目指す「働き方改革」や急速に進む少子化があります。少子化により若年層の人口減少が進む地域では、生徒数の減少により、一つの学校だけではチームが組めなかったり、部活動の存続が危ぶまれている学校も少なくありません
このような背景がある一方、地域クラブへの移行は、専門的な指導を受けられる、部活動のような限られた種目だけではなく多様な種目に取り組める、生徒のニーズに応じた活動ができる、地域の様々な人が関わることで地域活性化につなげるといった本質的な目的があります。
中学部活動が迎える転機~直面する課題
そのような課題を背景に、中学校の部活動を地域クラブ活動へ移行する議論が行われています。2023年度からは「改革推進期間」と位置付けられ、今年がその最終年です。また、有識者会議からは、「2031年度までに、原則休日の部活動の地域展開実現を目指す」方針が示されています。
部活動の地域移行の進展状況は、都市部と地方とで大きく異なっています。都市部では、生徒が利用しやすい施設が多く、そして、クラブチームがすでに存在していることが移行を促進する要因となっています。また、人口規模が大きいため、保護者をはじめとした地域住民によるクラブ活動への協力・支援を得やすく、地域全体でクラブ活動を支えているケースが少なくないそうです。
一方、地方では、人口減少による指導者不足が深刻な課題です。加えて、クラブチームがあり、利用可能な施設がある場合でも、ロケーションが障壁となり、生徒が通うための移動手段の確保の難しさが、地域移行の障壁となっています。
大学生×地域による地域クラブ活動モデル
中学校の部活動が地域へと移行する動きが全国的に進む中、NSGグループの新潟医療福祉大学では、大学の所在地である新潟市北区を中心とした地域の中学生に対し、学生によるスポーツ指導の実践的プログラムを展開しています。代表的な取り組みとして、「NUHWアカデミー Skill Up Camp(集合型)」と「放課後スポーツタイム(出張型)」です。
(NUHW:Niigata University of Health and Welfare新潟医療福祉大学)
「NUHWアカデミー Skill Up Camp」は、新潟医療福祉大学のスポーツ施設を活用し、大学の強化指定クラブに所属する学生が中心となって中学生を指導する集合型のプログラムです。昨年度は、11月~12月にかけて開催され、今年度も実施を計画しています。競技力の向上を目指す中学生に対し、専門的かつ実践的な指導が行われ、参加した中学生からは「先生の年が近く、接しやすいし、分かりやすかった」などの声が寄せられています。
「放課後スポーツタイム」は、新潟医療福祉大学の学生とNPO法人 総合型地域スポーツクラブ「ハピスカとよさか」の職員が、モデル校として選定された中学校2~3校に出向き、放課後の時間を活用して実施しているプログラムです。
「NUHWアカデミー Skill Up Camp」が競技力の向上を目指す一方、「放課後スポーツタイム」は、身体を動かし、スポーツに親しむ機会の提供を目的としています。
こうした取り組みの実施にあたって、中学生を指導する大学生指導員の計画的な育成が重要になります。新潟医療福祉大学とハピスカとよさかは、新潟市北区や地域の中学校と相談・協議しながら、大学生指導員の募集や養成研修に取り組んでいます。将来、教員やクラブ活動の指導者を志す学生も多いため、学生にとっては指導経験を積む貴重な機会であり、自身の専門性や将来のキャリアへの視野を広げることにもつながっています。

さらに新潟医療福祉大学では、ICT技術を活用した遠隔指導の導入にも取り組んでいます。これは全国でも先駆的な試みであり、新潟県と連携し、国の実証事業として行われています。成功事例を作り、モデル化することで、他の地域にも展開することを視野に入れています。地理的制約を受けにくいオンラインでの技術指導や、動画を活用したフィードバック体制を構築し、地域間の格差を解消し、すべての子どもたちが質の高い指導を受けられる環境づくりを目指しています。
持続可能なスポーツ・文化芸術活動環境を目指して
新潟市北区で地域移行が円滑に進んでいる背景には、地域・行政・教育機関が互いに役割を担い、相互に支え合いながら仕組みをつくっていることが挙げられます。こうした新潟市北区で取り組んでいる部活動の地域移行を推進するプログラムは、一つのモデルケースとなる可能性を秘めていると思います。
学生と地域が協働し、中学生へのスポーツ技術指導や運動機会の創出に取り組むこの活動は、他地域や文化芸術分野へも応用可能な部分があるかもしれません。地域ごとに特性が異なりますが、新潟医療福祉大学の取り組みが何らかの参考となり、地域移行の促進の一助となれば幸いです。 〆