食の現場から考える~人手不足を超えて、持続可能な社会へ

昨年の「働き方改革関連法」改正により、建設業、物流業、医療業界などで時間外労働の上限規制が新たに適用されました。いわゆる“2024年問題”は、人手不足や長時間労働の慢性化といった、日本社会が抱える構造的な課題を改めて浮き彫りにしました。
少子高齢化により生産年齢人口が減少する中で、あらゆる業界で人材確保が喫緊の課題となっています。労働集約型の産業においては、人材確保に加え、労働負荷の軽減も急務となっています。従業員が“働きやすさ”を実感できる業務設計や職場環境づくりが、企業に一層強く求められています。
食のインフラとして地域に根ざす
食産業も例外ではなく、現場では人手不足や業務負荷の増大といった課題が顕在化しています。こうした中で、NSGグループの食材商社・株式会社ライフプロモートは、生産性の向上と労働負荷の軽減を目指し、ICT活用やDX推進に積極的に取り組んでいます。
同社は「食を介して健康と笑顔と満足を創造する」を理念に掲げ、病院や福祉施設、学校等で提供される食事に必要な食材の卸売りと物流を担っています。さらに、高齢化の進行などにより、食の形態や顧客ニーズが多様化する中で、管理栄養士が監修した献立を元に食材をキット化したミールキットサービスや、減塩調味料等のオリジナル商品開発など、健康と利便性を両立するサービスを展開しています。
自社の物流網を通じて3温度帯で「安心安全」に、食材を届ける体制を整え、地域の健康と暮らしを支える“食のインフラ”の一翼を担うべく尽力しています。その一方で、限られた人員でサービスレベルを維持するためには、業務負担の軽減と生産性の向上が不可欠です。
“働きやすさ”を再設計するICT活用とDXの力
ライフプロモートは、今年4月の社屋移転を契機にICT活用およびDXの推進を本格化させ、従業員の業務負担を軽減し、より“働きやすい”職場環境の整備と業務プロセスの再設計を進めています。
具体的には、マルチピッキングカート、無線通信型表示機、牽引ロボットを順次導入しました。
マルチピッキングカートは、4件同時ピッキングを可能にし、システムが最短・最適ルートを案内することで、従来比で歩数を約4分の1に削減しました。

無線通信型表示機は、仕分け対象の棚にランプが点灯する仕組みで、ベテランから新人まで経験を問わず、正確かつスピーディーな作業を可能にしています。

牽引ロボットは、荷物を積んだ籠車を倉庫からプラットフォームまで自動で搬送し、荷下ろし後に自動帰還する機能を備えています。200kgを超える籠車の運搬作業は女性スタッフも行う作業であり、従来は何往復も必要な大変な作業でしたが、牽引ロボットの導入により業務負荷と作業時間を大幅に軽減しました。

ICT活用を基盤としたDX推進の効果は、作業効率の向上にとどまりません。業務ごと・従業員ごとの生産性が数値化され、データを“見える化”し、それに基づくシフト設計が可能になりました。これにより、経験則やアナログな判断ではなく、根拠に基づいた人員配置と業務設計を実現し、持続可能な働き方への確かな一歩を踏み出しています。
現場のニーズに応える食支援サービス
DXによる業務の再設計に加えて、ライフプロモートでは将来的に深刻化が見込まれる介護・福祉施設などの調理現場の人手不足を見据え2012年に立ち上げた、ミールキットサービス「楽膳」の販売に注力しており好調です。
「楽膳」は、献立作成から食材の小分け、組み合わせまでをライフプロモートで行い、施設では盛り付けや簡単な調理だけで食事を提供できます。調理工程の省力化とスタッフの負担軽減ができることから、施設の人手不足を解消する有効な手段となっています。

近年では、さらなる調理工程の省力化を求める現場の声に応え、「冷凍弁当」の提供も開始しました。温めるだけで美味しく、栄養バランスの優れた食事を提供できるこのサービスは、特に多忙な施設において導入が進んでいます。
食材商社として、新潟県内の大部分をカバーし、毎日配送が可能な体制を構築していることも、こうしたサービスの安定供給を支える基盤であり、堅持すべき基礎です。
テクノロジーと多様なサービスで人手不足に挑む
ライフプロモートは、日本が抱える構造的課題である人手不足への対応策として、DXやICTの活用、ミールキットや冷凍弁当といったサービスの拡充など、テクノロジーと仕組みの両面から従業員の業務負荷の軽減に取り組んでいます。
その結果として生まれた時間や貴重な人材を“人にしかできない仕事”に振り向け、業務の適正化を図ることは、事業やサービスを持続的に提供していく上で不可欠です。
生産年齢人口の減少により人手不足が深刻化する中、NSGグループは、各事業の現場で培った知見を活かしながら、現場の課題解決に寄り添ってまいります。そして、テクノロジーと多様なサービスを通じて、人々の暮らしを支える持続可能な地域社会の実現に挑み続けてまいります。     〆
NSGグループ>> https://www.nsg.gr.jp/
ライフプロモート>> https://www.lifepromote.jp/


