スポーツのこれからについて考える

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新たな変異株も次々に発生し、ウイルスは依然として身近な脅威としてありますが、世の中はウイルスと共存しながら様々な活動を再開し、経済を回していく方向に進んでいます。私たちは今、模索を繰り返しながら、ウイズコロナの時代を現在進行形で生きています。

感染状況に応じたイベントの開催制限が緩和され、スポーツの分野においても安全計画を策定する事で収容率の100%まで入場する事ができるようになりました。大きな声で声援を送ったりすることはまだ出来ず、コロナ前と全く同じではなく、徐々に活動を広げている最中ではありますが、今後の在り方について考えてみました。

改めて感じたスポーツの価値

昨年2020の春、緊急事態宣言が出され、不要不急な外出を避け、ステイホームが推奨されました。東京オリンピック・パラリンピックは1年延期され、プロスポーツの試合も行われなくなり、インターハイや高校野球の甲子園大会をはじめ、一時的にほぼ全てのスポーツの活動が停止しました。音楽のライブイベントや観劇などもそうですが、スポーツは不要不急なものとされ、また人と接触したり、大勢が集まったりする活動として、自粛するカテゴリーに分類されたという事と思います。
それ以前はメディアなどを通して、毎日スポーツの話題に触れて過ごしていましたが、流れてくるのは中止や延期の話題ばかりで、コロナでこの先どうなるかという不安と共に、何か物足りないというか、寂しいというか、心に穴が開いたように感じていた人は私だけでないと思います。
スポーツには様々な楽しみ方がありますが、プロスポーツをはじめ競技を観戦することは、エキサイティングな試合展開に興奮したり、選手の活躍や努力に感動したり、元気や勇気をもらえたりします。また、好きなチームを応援するコミュニティが出来たり、家族や地域に明るい話題を提供したり、コミュニケーションを促進してくれます。部活動などでは、若者が目標に向かって努力したり、友情を育んだり、家族や支えてくれている人の思いに気付く機会にもなったりします。また、身体を動かすことが健康の維持・促進に繋がるのは言うまでもない事でしょう。
スポーツの価値を一言で表現するのは難しいと思いますが、様々な面から私たちの生活に彩を添え、豊かさを感じさせてくれるものであると思います。戦時中にオリンピックや甲子園が中止になったのと同じように、昨年の春は特別な状況であったわけですが、スポーツが当たり前に行われている社会が、いかに幸せで、そして尊いものであったかに気付かされました。

厳しい状況にあるプロスポーツチーム

私が代表を務めるNSGグループは、各スポーツの“アルビレックス”の運営を支援していますが、どのクラブも新型コロナウイルスによる影響を大きく受けました。一時は興行が行えない、各種イベントが行われない、練習もままならないという状況になりました。興行は再開されましたが、収容人数は制限され、また、大きな声で応援することはできません。チケットやグッズの売り上げの減少が厳しい状況であるのはもちろんですが、ウイズコロナの中でサポーター、ブースター、応援してくれる皆さんとこれまでと同じように繋がることが出来ないという事が、クラブにとって難しい問題だと思います。
また、クラブにとって活動を支えてくれるスポンサー企業の存在は非常に大きなものです。プロをはじめ社会人の競技スポーツの多くは従来から、企業に支えられその活動が成り立っています。以前は大きな企業一社がチームを所有し運営するという形態がほとんどでしたが、今はいわゆる地域密着型の、地域の複数の企業に支えられているプロチームが増えてきました。
一企業で選手やチームを支える企業スポーツは、企業の広告塔として存在するというのが第一義に置かれています。企業スポーツは、後世に名を残す多くの名選手を生み出し、スポーツの歴史において大きな役割を果たしてきましたが、一方でバブル崩壊やリーマンショックなどの経済危機の後には、親会社の事情により、廃部、休部する団体も数多くありました。一企業の業績により存続できなくなるというのは安定感という面で不安があります。
一方で後者の地域密着型のクラブは、複数の企業のサポートを得ながら、地域と共にある存在です。Jリーグは創設当時、百年構想を打ち出し、地域に根差したスポーツクラブによるスポーツ文化の振興を謳いました。アルビレックス新潟はその精神の体現に先駆的に取り組んできたクラブです。その考え方をバスケットボールで展開したのが新潟アルビレックスBBです。大和証券から休部となったチームを譲り受け日本初のプロチームとして発足し、その後、志を同じくするチームと共にプロバスケットボールリーグのBJリーグを立ち上げました。他にも、野球や陸上、スキー・スノーボード、レーシング、チアリーダーなど、新潟にはアルビレックスの名を冠するチームが7種目12チームあり、それぞれ独立採算で地域に根差して運営されています。
地域密着型のクラブの主役は地域であり、支えてくれる企業も広告価値だけではなく、スポーツや地域の発展を目指して応援してくれているという点は企業スポーツと大きく違う点ではないかと思います。

スポーツの持続可能な在り方を考える

地域と共にある地域密着型のクラブが持続的であるためには、地域の皆さんに支えてもらうだけではなく、チームが地域の中で役割を果たさなければいけません。それは地域の象徴的な存在として、人々をつなぎコミュニティの交流を活性化する事であったり、子供たちに夢や希望を与える事であったり、明日への英気を養うスペクタクルな非日常空間を提供する事であったり、感動や勇気を与えるなど、スポーツの持つ価値を通して地域の皆さんを元気にする事だと思います。
また、もちろん試合に勝つことを目指すのが前提にありますが、それだけではなく、地域の皆さんと一体となって地域を盛り上げていける存在となり、地域にとってなくてはならない存在になることが、持続可能な在り方であろうとも思います。その方法は、地域の持つ歴史や個性の影響も受け、正解は一つではないと思いますし、試合を離れた場でも、その方法はいくらでも考える事ができると思います。それを模索しながらチャレンジしていくことで、地域の皆さんから愛され、なくしてはいけない存在となることで、苦しい時に応援してもらえるチームになるのだと思います。
私も、アルビレックスと共に地域を元気にする活動に取り組んでいきたいと思います。