プレミアム日本酒で新潟の魅力を世界に発信~今代司酒造の挑戦~

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今代司酒造が手がける日本酒が、2つのコンペティションで賞を授与されるという嬉しいニュースがありました。「IMA 牡蠣のための日本酒」は、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2023」のプレミアム純米部門で金賞を受賞しました。また、「錦鯉」は、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2023」のSAKE部門でブロンズを受賞しました。新潟県は、一人当たりの清酒の消費量が日本一であり、酒蔵の数も日本一として知られています。今回はその新潟の酒蔵の中でも独自の輝きを放つ今代司酒造についてご紹介します。

伝統ある酒蔵の再生

今代司酒造は江戸時代の明和4年(1767年)に創業し、新潟市の沼垂地域で酒造りを営む歴史ある酒蔵です。沼垂は阿賀野川の伏流水が豊富であり、栗ノ木川によって原料や製品の運搬も容易でした。そのためこの地域には多くの酒蔵や味噌蔵、醤油蔵が存在し、発酵食の町として知られています。かつて日本酒が瓶詰ではなく樽詰めで出荷されていた頃、酒屋さんは酒蔵から仕入れた酒を水で薄めて量を増やして販売することが許されており、そのような状況なので、酒蔵でも出荷する前に水を加えていたところもたくさんあったそうですが、今代司酒造は品質を重視し水で薄めることなく出荷していたそうです。

今代司酒造は後継者に恵まれず、2011年にNSGグループが事業を引き継ぎました。伝統的な酒蔵の価値を保ちつつ、和モダンなイメージにリニューアルしました。地方の酒蔵再生モデルとして注目を浴びています。NSGグループは、今代司酒造だけでなく、明治38年に創業した味噌蔵の峰村酒造や明治26年に創業し鮭の焼漬けなどを製造・販売する小川屋も事業承継し、伝統と現代の融合を図りながら、地域の経済や文化を支えてきた老舗企業の再生に取り組んでいます。

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伝統を守りながら革新的な酒造りに挑戦

酒造りにおいては、伝統を頑なに守りながらも品質向上のための革新を重ねています。今代司酒造は原点に立ち返り2006年からアルコール添加を一切行わない全量純米仕込みに切り替えました。これは、新潟において戦後初めての取り組みでした。アルコール添加やその他副原料を使わないため、酒造りの最後に味や香りを調整することができません。それゆえ酒造りのすべての工程が緊張感あふれる真剣勝負となります。純米大吟醸、純米吟醸、純米酒と、純米だけを使って酒造りをするという個性を大切にした酒造りに取り組んでいます。また、原料となるお米には日本酒造りにぴったりと言われる酒造好適米を使用しています。多くのお酒において新潟県産の酒造好適米を100%使用することで、純米ならではの旨味とキレを両立させています。さらに、仕込み水にもこだわりがあります。最適な水を求め、現在では仕込み水として名水で有名な新潟県五泉市にある「菅名岳」の天然水を使用しています。これらひとつひとつの酒造りへのこだわりが、前述のコンペティションでも評価して頂いたのだと思います。

酒質はもちろんですが、瓶や化粧箱のデザイン性の高さもご評価いただいています。純米酒「錦鯉」は2016年度グッドデザイン賞を受賞したことをはじめ、イタリア・ミラノの「A’DESIGN AWARD」でプラチナ(部門最高賞)、アメリカ・ニューヨークの「THE ONE SHOW」で金賞など世界各国のデザインコンペティションでも数々の賞をもらいました。その美しいパッケージデザインは海外でも大きな反響を呼び、多くの人々に注目されました。贈答品として利用されることが多いのですが、国内の需要だけでなく海外への輸出も増え、また外国人観光客がお土産として購入する機会も多いそうです。魅力的なパッケージデザインを通じて、日本文化の魅力を日本全国や世界中の人々に伝えることにも取り組んでいます。

今代司酒造の代表取締役社長を務めているのは岡田 龍さんです。岡田社長は、金融機関に勤務していましたが、2022年6月に今代司酒造の代表取締役社長に就任しました。「新潟の日本酒の魅力を世界の多くの人々に知っていただき、楽しんでいただくことで、新潟の方々にも地域への誇りと喜びを感じていただけたら」との想いを持ち酒蔵の経営に取り組んでいます。

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こだわりの日本酒を世界へ発信

今代司酒造では、観光酒蔵として酒蔵を開放して酒蔵見学を実施し、少しでも多くの方々が地酒の魅力に触れ、楽しんでいただける環境を提供しています。酒蔵見学では、酒づくりの話とともに、新潟や沼垂地域の歴史などもスタッフが説明します。昔の看板や酒造りで使用した道具など、時代を感じさせる物を展示し、地域の文化や歴史に触れる機会となります。また、酒蔵見学の後には、純米酒のテイスティングが楽しめます。10種類以上の銘柄を用意し、お酒が苦手な方のこと配慮し、ノンアルコールの甘酒も提供しています。

コロナ禍前には年間の来訪者が2万人を超え、外国人観光客も毎日のように訪れてもらいました。コロナが2類から5類に移行したことで、インバウンドも含め来訪者が戻ってきています。多くの方に足を運んでもらい、日本酒の魅力や新潟の文化に触れてもらうことを期待しています。

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海外では日本酒の人気が高まり、財務省貿易統計によれば、2022年度の日本酒輸出実績が金額・数量ともに過去最高を記録しまし、輸出額は13年連続で前年を上回りました。特に製法にこだわった「プレミアム」な日本酒への需要が高まっているようです。そうした中、今代司酒造も海外市場の販路拡大に力を入れています。香港やシンガポールをはじめとするアジア圏を中心に、ヨーロッパにも輸出しています。外国人観光客が酒蔵見学に訪れる際に得られるフィードバックは、マーケティングを行う際の貴重な情報として、日本酒の味だけでなく、瓶や化粧箱のデザインなど商品開発の参考になります。今後も積極的に外国人観光客を受け入れ、現地で新潟の文化にふれてもらうことはもちろん、海外展開にも積極的に取り組み、喜ばれる日本酒を世界に広めることで、新潟の文化や魅力を世界中に発信していきたいと思います。      〆