教育の地域格差を解消するためのDX活用

暖かい日も少しずつ増え、春が近づいて来ていることを感じる今日この頃です。春と言えば受験シーズンでもあります。この時期神社の前で手を合わせている生徒の姿を見ると、これまで積み上げてきた努力が報われることを願って止みません。
さて今回は、NSGグループが1977年の創業時にスタートした事業であり、47年間経た今もグループの基幹事業の一つであり続ける学習塾事業が取り組むDXについて紹介したいと思います。

つまずきの瞬間が成長の機会

以前も触れたことがありますが、NSGグループは古町愛宕神社の境内に校舎を建て、学習塾、資格取得スクール、語学スクール、カルチャークラブの4つの部門からなる教育事業からはじまりました。現在は、 (株)NSGアカデミーという会社が学習塾部門を担い、クラス指導の「NSG教育研究会」、個別指導の「NSG PLATS」、ICTを活用した「NSGアカデミー 東進衛星予備校」を新潟、福島、山形の3県で展開しています。
今回テーマとして取り上げるのは、NSG PLATSのオンライン個別指導です。
オンラインの説明の前にNSG PLATSの特徴を紹介いたします。個別指導塾は数多くありますが、NSG PLATS は、先生が一人に対して生徒一人の完全1対1指導を取り入れています。スタート当初は他の個別指導塾が行うように、一人の先生が二人生徒を指導するスタイルでしたが、2010年に現在のスタイルに転換しました。その理由は、生徒のつまずきの瞬間に立ち会うことを大切にしているからです。問題を解いて不正解となる場合に、結果は同じ不正解でも、生徒によりその過程や中身は異なります。例えば数学で途中の計算が違うのか、式の立て方が違うのかなど様々です。また、手を止めている時間も、考えているのか、先に進めずにいるのか、その理由はその時々によって違います。つまずいたタイミングで適切なサポートを行うことが最も学習効果が高く、成長できる機会であると捉えています。一人の先生が同時に複数の生徒に指導できないことは一見非効率に見えますが、適切なサポートができるタイミングを見逃さないためにも1対1がベストな選択だという考えがベースにあります。

画像

地域による教育格差を解消に取り組む

教育実績が上がることで、生徒や保護者の信頼を獲得し一つの事業ドメインとなりましたが、地方で拠点を増やしていく上で課題がありました。個別指導では多くの大学生が講師として活躍してくれています。新潟市のように大学が複数あり、学生が集まる都市やその周辺地域では講師を確保できますが、近くに大学がない人口規模の小さな市町村では講師確保が難しいという課題です。教育事業を行う上で、地域による教育格差の解消に取り組むことは非常に重要なことです。その方法の一つとして、人財確保のできる地域からオンラインで1対1の個別指導を行う事はできないかというというアイデアがあり試行錯誤を続けていました。
そうした事業の検討はコロナ禍より前から行っていましたが、中々うまくいきませんでした。市販のWEB会議システムやタブレット端末、スマートフォンの活用など試行しましたが、残念ながら対面で行っている1対1指導と同等のクオリティーには届かず、事業化とはいきませんでした。
そうした中で、コロナ禍に突入しました。社会全体でオンラインでの学習ニーズが高まる中で、コロナ以前から相談をしていた新潟市に本社を置くICT企業の(株)BSNアイネット様との共同開発で”MULT- i(マルチアイ)”というオンライン教育システムの開発に辿り着きました。このMULT-iでは4つの高画質映像を送受信することができるソリューションで、生徒と講師の表情、そして双方の手元を映し出して、オンライン授業を行う事ができます。このシステムの開発により、NSG PLATSが大切にしている、生徒のつまずきの瞬間、成長のきっかけを見逃さないという指導が実現できるようになりました。
また、このシステムには、生徒の表情から、喜びや悲しみ、驚きなど7つの感情を分析するAIも組み込まれており、講師の指導をサポートします。

画像

DXにより広がる可能性

2021年に、オンラインによる個別指導を行う最初の教室を新潟県五泉市で開校しました。現在は3教室を展開し、新潟市内のオンラインセンターから3教室の生徒の指導を行っています。この事業を開始して3年が経過し、運営ノウハウの蓄積と共に、教育効果が非常に高く、対面指導に引けを取らない同等かそれ以上の結果につながる事が実証されました。
対面での教育サービスをオンラインに置き換えることで、地域や場所を選ばず教育サービスを提供するということを実現できました。指導の過程と結果をデータとして蓄積し活用することで、この先には、経験の浅い講師でもベテラン講師のような指導を行うことも可能となるかもしれません。 今後もDXにより広がる可能性を追求し、新たな事業展開にチャレンジしていきたいと思います。      〆