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スイマーズショルダーを有するエリート競泳選手のバタフライ泳時の筋協調性を解明 〜スイマーズショルダーを有する選手は筋協調性が異なる〜

2022.09.13 Tue

この度新潟医療福祉大学 健康スポーツ学科 松浦由生子講師の研究グループは、競泳競技で最も多い運動器障害であるスイマーズショルダー(肩関節痛)の発生メカニズムを解明するために、協調性の観点からスイマーズショルダーを有するエリート選手のバタフライ泳時の特徴を明らかにしました。スイマーズショルダーを有する選手は健常選手と比較して、プル動作初期の大胸筋の活動を大腿直筋で補っていること、プル動作後期の僧帽筋下部の関与が少なく、手が入水する直前・直後には僧帽筋上部の関与が大きいことが分かりました。本成果は、競泳選手のバタフライのパフォーマンス向上やリハビリテーションに貢献できるものです。また、本研究成果は、国際誌 Scientific Reports (9月6日付)で掲載されました。

研究成果のポイント

  1. 競泳競技におけるバタフライ泳では体幹のうねり動作を含み、上肢と体幹・下肢のタイミングや連動性が重要であると考えられていましたが、スイマーズショルダーを有する選手のバタフライ泳時の全身の筋協調性については分かっていませんでした。
  2. 今回の研究により、スイマーズショルダーを有する選手は健常選手と比較してバタフライ泳時の筋協調性が異なることが明らかとなりました。
  3. バタフライ泳におけるスイマーズショルダーの予防やリハビリテーションにおいては、肩関節周囲のみならず、タイミング毎にターゲットとなる筋に着目し、上肢・体幹・下肢筋の協調性を改善するエクササイズの導入が重要であることが示唆されました。

 

 

【研究概要】

競泳選手に最も多い運動器障害は『スイマーズショルダー』と称される肩関節痛であることが報告されています。これまでの研究においては、スイマーズショルダーの発生要因に関して、肩関節周囲の動きのみに着目しており、他関節部位との関連は明らかにされていません。バタフライ泳では体幹のうねり動作を含み、上肢と体幹・下肢のタイミングや連動性が重要となるため、肩関節だけでなく体幹や下肢を含む全身の協調性を明らかにする必要があります。

本研究ではエリート競泳選手20名を対象に上肢・体幹・下肢の全12筋の筋活動を計測し、協調性を評価することができるシナジー解析を用いて、バタフライ泳時の筋協調性をスイマーズショルダーの有無で比較しました。その結果、スイマーズショルダーを有する選手はプル動作初期の大胸筋の活動を大腿直筋で補っていること、プル動作後期の僧帽筋下部の関与が少なく、手が入水する直前・直後には僧帽筋上部の関与が大きいことが分かりました。

本研究で筋協調性に着目したことで、バタフライ泳におけるスイマーズショルダーでは肩関節周囲のみならず、全身の協調性改善が重要であることが示唆されました。本成果を踏まえて、タイミング毎にターゲットとなる筋に着目した、上肢・体幹・下肢筋の協調性エクササイズがスイマーズショルダーの予防やリハビリテーションにおいて重要となるかもしれません。

 

 

 

図1: スイマーズショルダーの選手のバタフライ泳時の筋協調性の特徴

スイマーズショルダーを有する選手はプル動作初期の大胸筋の活動を大腿直筋で補っていること、プル動作後期の僧帽筋下部の関与が少なく、手が入水する直前・直後には僧帽筋上部の関与が大きいことが明らかになった。

[原著論文情報]

  1. Matsuura Y, Matsunaga N, Akuzawa H, Kojima T, Oshikawa T, Iizuka S, Okuno K, Kaneoka K. Difference in muscle synergies of the butterfly technique with and without swimmer’s shoulder. Scientific Reports. 2022.(In-press). DOI: 10.1038/s41598-022-18624-8

 

本研究は「日本学術振興会科学研究費助成事業」からの支援を受けて行われました。

 

研究に関する問い合わせ先

松浦 由生子(まつうら ゆいこ)

新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科 講師

〒950-3198 新潟県新潟市北区島見町1398番地

TEL 025-257-4455

 

 

【新潟医療福祉大学】 https://www.nuhw.ac.jp/

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