「贈る」から始まる障がい者雇用~企業と地域をつなぐ「SDGsギフト」とは。

2026.01.16 Fri

企業の贈答品をきっかけに、障がい者雇用を地域へ広げる。株式会社NSGソシアルサポートが展開する「SDGsギフト」は、新潟県内の福祉施設でつくられたお菓子を詰め合わせたもので、企業のお中元・お歳暮などで活用されています。この取り組みは5年目を迎え、反響が少しずつ広がっています。
“贈る”という日常の行為を入口に、雇用の場と企業、地域をどうつないでいくのか。代表取締役の樋口督水さんに伺いました。

NSGソシアルサポートが展開する「SDGsギフト」を手に微笑む代表取締役の樋口督水さん

 

なぜギフトなのか。企業のニーズと“伝わる体験”。

― このSDGsギフトを企画するに至った背景についてお聞かせください。

樋口 もともと当社は障がい者雇用に取り組んでいる企業ですが、自社だけで雇用できる人数にはどうしても限界があります。ならば、複数の施設や企業が関わる仕組みで、地域全体に障がい者雇用を広げられないか。そう考えたのが出発点でした。加えて、障がいのある方のスキルや能力は、実際に関わらないとなかなか伝わりません。働いている現場に、「ぜひ一度、見にきてください」と言うだけでは、どうしてもハードルが高いと感じていました。

 

― その中で、ギフトという形に可能性を感じた理由は何だったのでしょう。

樋口 地域の福祉施設で手づくりされているお菓子は、本当においしいものが多いのです。お菓子なら、味わうことで「すごいな」「丁寧な仕事だな」と、直接感じてもらえる。さらに、企業の贈答品としても需要が見込めるのではないかとも感じました。そんな折、障がい者雇用に取り組む企業から、「お中元やお歳暮に地域の福祉施設の商品を添えたい」という話を聞いたのです。それなら、「いくつかの施設のお菓子をまとめてギフトにできないか」と考え、新潟県内の福祉施設に声をかけるところから、このSDGsギフトが始まりました。2021年から始動し、現在は5施設からクッキーや煎餅などの商品を納入しています。

NSGソシアルサポートが展開する「SDGsギフト」

 

― このギフトならではの特長や、他のギフト商品との違いをどのように捉えていますか。

樋口 一番の特長は、「ただお菓子を売っている」のではなく、「想いや背景も一緒に届けている」という点です。新潟県内の複数の福祉施設で心を込めてつくられたお菓子を厳選し、箱詰めしてギフトとして仕上げる工程は、当社で働く障害のある方たちが担っています。
また、企業ごとのオリジナル要素を大切にしているのも特長です。企業名が入ったラベルを作成したり、用途に合わせたセット内容を考えたりと、その会社ならではのストーリーを込められる。単なる「もらって終わり」のギフトではなく、会話のきっかけになる、記憶に残る贈り物になっています。

インタビューに応えるNSGソシアルサポート代表取締役の樋口督水さん

 

一人ひとりの得意を活かすギフトづくり。

― 障がいのある方は、どんな工程を担い、どう役割分担していますか?

樋口 関わっていない工程はほとんどありません。福祉施設でのお菓子づくりはもちろん、当社では箱の組み立て、緩衝材を入れて商品を並べる作業、発送準備まで、一連の工程に障がいのある方が携わっています。また、企業名入りの包装紙を、一つひとつ丁寧に貼る作業も重要な役割です。完成したギフトが「商品」として成立するまでの流れを、みんなで分担しながら支えています。
障がいの特性は人それぞれです。得意が生きる工程に配置し、無理のない手順に分けていく。一人で全工程をこなせる方もいれば、特定の工程だけを担当する方もいます。作業時間や期間を柔軟に設定し、お中元やお歳暮の時期に合わせて2~3週間ほどで約500セットを発送していますが、無理のない工程を心がけています。

「SDGsギフト」を梱包するNSGソシアルサポート職員

 

― 作業を進める上で、特に大切にしていることを教えてください。

樋口 うまくできたことはすぐに伝えるようにしています。ラベルを驚くほどまっすぐ、きれいに切れる方がいるのですが、そういう「すごさ」を見つけたら、まずは感謝を伝える。食品を扱う以上、注意が必要な場面もありますが、「ありがとう」「助かっているよ」という気持ちは、必ず言葉にしています。

 

SDGsと地域への広がり~企業の反応、現場の変化、そしてこれから。

― 実際に導入した企業からは、どのような反応が寄せられていますか。

樋口 最初は「社会貢献になるから」という理由で導入された企業が多かったのですが、後から話を聞くと「営業先でギフトをお渡ししたら、取り組みについて質問が広がり、会話のきっかけになった」という声をよくいただきます。また、「おいしい」「どこで買えるの?」と、味そのものを評価してもらえることも多いですね。3年目以降は、社員向けに配布したいという企業も。自社のミッションや、社員への感謝を伝えるツールとして活用していただけているのは、素直に嬉しいですね。

インタビューに応えるNSGソシアルサポート代表取締役の樋口督水さん

 

― このギフト事業を通じて、利用者の方や現場にはどのような変化が生まれましたか。

樋口 ギフトづくりは「形」になって完成する仕事なので、やっている実感が持て、よりやりがいを感じてくれる方が多いですね。企業からの反応を伝えると、「その会社を見に行ってみたい」と話す方もいます。お菓子をつくっている施設の方も、自分たちの商品がギフトとして並び、「おいしかったよ」と言われることで、表情がぱっと明るくなる。その瞬間を見るたびに、この仕事の意味を実感します。

 

― 今後、このSDGsギフトをどのように広げていきたいと考えていますか。

樋口 一般販売を広げるというよりは、企業や事業者単位で、その会社ならではの想いを形にするギフトとして広げていきたいですね。お中元・お歳暮だけでなく、営業ツールやご挨拶用のミニギフトなど、年間を通じて使ってもらえる形も増えていっています。この取り組みを通じて、福祉施設側にも新しいチャレンジが生まれています。「こういう商品が求められているのだ」と分かることで、新商品開発につながったケースもあります。私たちはあくまで“つなぐ役”。障がいのある方、福祉施設、企業、それぞれが少しずつ前に進める循環を、これからも丁寧につくっていきたいと思っています。

NSGソシアルサポートが展開する「SDGsギフト」

 

株式会社NSGソシアルサポート

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TEL:025-211-4271 / FAX:025-211-4273
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障がいがあるなしに関わらず働く環境を選択して働き続けられるように、という思いのもと2020年に設立。事業目標は障がいのある方の能力を最大に活かし活躍できる環境を整え、違った個性のある方の多様な働き方を提案し地域社会で多くの障がいのある方が当たり前に働く姿をもっと増やすことです。 また、一般の方々がそうであるように、時間や働く場所、職種を選択できるような地域を作っていくことも目指しています。