介護・福祉業界では新潟県内初の週休3日制を導入。理想のワークライフバランスを実現する新しい働き方。

2023.07.14 Fri

現在、介護分野の人材不足が社会課題となっていますが、社会福祉法人 愛宕福祉会では介護職の業務負担軽減と、理想のワークライフバランス、人材定着・離職防止などを目指して、週休3日・1日10時間シフトの新しい働き方「167PROJECT」(年間休日167プロジェクト)を2022年7月にスタートさせました。

プロジェクトのスタートから1年が経過し、どのような経緯でこのプロジェクトを立ち上げたのか、実際にどのようなメリットがあったのか、さらには今後の展望などを愛宕福祉会 人事部部長 馬込正利さんに伺いました。
週休3日・1日10時間シフトを導入した愛宕福祉会

プライベートの充実でリフレッシュし、仕事への意欲が向上。

― 「167PROJECT」の具体的な内容を教えてください。

馬込 特別養護老人ホームの介護職に導入した新しい働き方で、職員それぞれが思い描く理想のワークライフバランスを実現しやすくすることを目指したプロジェクトです。週休3日で1日の勤務時間は10時間とこれまでの8時間勤務に比べ2時間増えますが、年間休日数167日と以前より50日増え月間の休日は約半月の14日と4日増加になります。また増えた2時間の勤務で特に必要な時間帯の人手を厚くする事ができ、業務負担の軽減が可能に。さらには引き継ぎや事務作業も勤務時間内に行えるようになり、大幅に時間外勤務が軽減され、生産性アップにもつながりました。

愛宕福祉会 人事部部長 馬込正利さん

愛宕福祉会の、週休3日・1日10時間シフトの新しい働き方「167PROJECT」(年間休日167プロジェクト)

― 現在、いくつの施設で週休3日制を導入されていますか?

馬込 導入当初は4つの施設でしたが、現時点では6施設へと拡大しました。スタートした頃は、休日は増えるものの1日の勤務時間が10時間になるわけで、職員がその変化に対応できるか慎重に見守っていましたが、スムーズに移行できたようで安心しています。勤務時間の延長より、休日の多さや時間外勤務の減少に魅力を感じたからのようです。想定した以上にプロジェクトが好評で、職員からも喜びの声が上がっています。

― 具体的に職員の方からはどのような声が上がっていますか?

馬込 多く聞くのは「休日が多くなった」、「土・日の休みが多くなった」、「3連休・4連休も取りやすくなった」という声です。最近は「1週間の連休が取れて海外旅行に行ってきました」という職員も数名いると聞いています。このように休日を利用してリフレッシュすることで、「仕事を頑張るぞ」という気持ちになりますからね。職員がそういう気持ちで臨んでくれると、施設にとってもプラスに働きます。当プロジェクトは期待以上の成果を上げていると感じています。

人材不足の打開策として、改革に意欲的な施設長がチャレンジ。

― このプロジェクトを始めたきっかけや背景について教えてください。

馬込 2025年には介護職が全国で34万人不足すると推計されており、当法人でも人手不足が課題でした。そんな時に、当時の人事部長が他の施設で週休3日に取り組んでいるところがあるという情報を得て、特別養護老人ホームの各施設長を集めて週休3日制導入の検討会を実施。議論を重ねた結果、『業務負担軽減や理想のワークバランス、人材定着、離職防止に繋がるから導入する方向で進めよう』という結論に達しました。その後、よく調べてみると、週休3日制にも3タイプあることが分かりました。

― 週休3日制にはどのようなタイプがあるのですか?

馬込 1日8時間勤務のままで週休3日にする代わり減給になる給与減額型、1日8時間勤務を変えず5日で行っていた業務を4日で行い給料は現状維持という給与維持型。そして当法人が採用したのは、休みになる8時間の勤務時間を残りの4日に振り分けて、1日10時間勤務にして給料が変わらない労働時間維持型です。介護職の不規則なシフトや24時間の勤務体制を考えると、それがいちばん現実的だということから選択しました。

― 現場の施設長からは、会議の席でどのような意見が出ましたか?

馬込 当時私は特別養護老人ホームの施設長を務めており、やはり人手不足が課題でした。各施設長は工夫を凝らして施設単位では色々と改善を試みていましたが、解決策は見いだせないままで…そんな時に週休3日制の話が出てきたので、「これは大きな打開策につながる」と思いました。他の施設長も同じ考えのようでした。だから、このプロジェクトはトップダウンというより、各施設長が課題を解決するために思いきってチャレンジしたということでしたね。

離職者が激減し、新規・中途採用面でも大きな効果が。

― 導入当初、スムーズに走り出すために何か工夫はされたのですか?

馬込 子育て世代など10時間勤務が難しいと思われる職員もいたので、法人内すべての特別養護老人ホームを10時間勤務にはせず、各エリアで8時間勤務の施設を残し、働き方を自身で選択できるようにしました。実際に始めてみると、「10時間勤務は無理なので、他の施設に移りたい」と言った職員は、わずか2名しかいませんでした。

― 馬込さんは施設長として不安ではなかったですか?

馬込 1日の勤務時間が2時間増えるので、体力的に持つのか正直不安でした。しかし、実際に始めてみるとメリットの方が多く、これはいけそうだという手応えを感じました。新しいアイデアがあれば失敗を恐れずに積極的にチャレンジしてみる。これは当法人に限らず、NSGグループの企業風土であり、誇るべき特長です。このプロジェクトを通じて、それをあらためて実感しました。

― プロジェクトを始めて1年が経ちましたが、どのような効果がありましたか?

馬込 まず目に見えて効果があったのは離職者が減ったことです。介護職の離職率は一般的に年15〜20%と言われており、2022年度の当法人の離職率は9.5%とそれよりもかなり低い水準だったのですが、プロジェクトを実施した施設ではさらに低く5.3%。介護業界では驚くべき数字です。離職者が減るということは、経験のある職員が定着するということでもあり、サービス品質の向上に繋がります。
また、新卒・中途採用の応募者が増えました。介護業界は24時間体制で休みを取りにくいというマイナスイメージを持たれることもある中で、当法人が行っている週休3日制、年間休日167日は魅力的に映っているようですね。

研修制度を充実させ、職員のスキルアップを図る。

― 職員のスキルアップやキャリアアップにも力を入れていると聞きましたが。

馬込 研修制度の充実は強みの一つです。無資格・未経験の方が入職した場合、まず介護職のスタート資格でもある「初任者研修」の講習を働きながら受けて、資格取得を目指してもらいます。その後の介護福祉士国家資格の取得に関しても、様々なバックアップをしており、現在介護職員の約8割がその資格を取得。まさに“介護のプロ集団”と自負しています。資格取得のための講義や実地研修などを年間60回以上行い、職員のスキルアップ、キャリアアップを図っています。

また月に1回、各施設の専門職同士による意見交換や勉強の場を設け、日々の悩み事を話し合って解決できるようにしています。それができるのも、施設数・専門職数が多い当法人のスケールメリットです。

週休3日制、年間休日167日に魅力を感じて検討してくださった無資格・未経験の方にも、安心して入職していただける場を整えています。

― 最後にこれから167PROJECTをどのように推進していきたいですか?

馬込 導入して1年が経ちましたが、制度として再検討する点がないか検証し、バージョンアップしていきたいですね。現在はある程度職員の多い特別養護老人ホームに限っていますが、今後はそれ以外の施設での導入も視野に入れています。そのためにも職員の声に耳を傾けながらプロジェクトを推進し、もっと働きやすい職場づくりに挑戦していきたいです。

 

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安心して老いることのできる社会・ノーマライゼーション理念の実現・豊かな人間性の育成を目指し、高齢福祉事業、障がい福祉事業、児童福祉事業を展開しています。利用者一人ひとりのかけがえのない笑顔と思いを大切に、安心した生活が送れるよう支援を行い、家族・地域の方々から信頼される社会福祉法人を目指します。

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