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多様性を認め合い、主体性を重んじ、サッカーを通して人生を豊かにする開志国際高等学校 / 大久保 悟
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大学で教員免許を取得し、卒業後はJFLヘ。
その後、活躍の場をオーストラリアへ移し、貴重な経験を積む。
帰国後、中学校、高校でサッカー指導者を務める。
そんな時、恩師から新設高校のサッカー部の監督の話が…
故郷の兵庫から遠く離れた新潟で、まさにゼロからのスタート。
そんな大久保さんが見据える、サッカーを通した教育観とは。
信念を持って指導していくことの大切さを学ぶ
サッカー部の監督に就任されて部員と初めて対面した時は、どのような気持ちでしたか?
新設校の、しかも経験の浅い指導者を選んできてくれた生徒たちに、まずは感謝の思いでいっぱいでした。結果がどうであれ、卒業する時にこの学校を選んで良かった。そう思ってもらえるようにしよう。 “愛情を持って、信念を持って指導していこう”という気持ちでしたね。
実際に指導をしての感想はいかがですか?
1年目の部員は14人。紅白戦もできなかったので、練習では私も混じってプレーしました。本当にゼロからのスタートでしたね。強豪校と呼ばれる学校では実績も伝統も出来上がっているので、このような“ゼロをイチにする”経験は滅多にできません。だから生徒たちにとっても、指導者の私にとっても貴重な財産になる。当時の練習環境はベストではなく歯がゆい思いはありましたが、それ以上にプラスの面が大きいと思っていました。
監督をする上で大切にしてきたことは何ですか?
当校のバスケット部の富樫英樹総監督がよく言われるのですが、「ローマは一日にして成らずだよ。目の前の生徒たちを大切にして、信念を持って伝統を作っていくことが大切だ」と。その言葉を自分に言い聞かせてきました。
オーストラリアで体感した、サッカー指導の原点
チームとしていちばんこだわっている点は何ですか?
いつも部員に「Good Game」を追求しようと言っています。勝ち負けを大切にするのは当たり前ですが、仮に我々が勝ったとしても負けたとしても、「またこのチームと一緒に試合をしたい」と相手のチームに思ってもらえる選手やチームを目指す。そして観ている人が感動する、応援したくなる、そんな尊敬される選手やチームを常に目指す。それが「Good Game」の意味するところです。
なぜ、そのような考えに辿り着いたのですか?
選手としてオーストラリアに行った時に思ったのですが、一生懸命に信念を持ってやっていると、まわりの人たちは、人種、国籍、言語に関係なく認めてくれた。その時、「その人の思いや振る舞い一つで、人から応援してもらえるんだ」と思いました。サッカー指導者になった今、その経験を部員に伝えています。そうすれば卒業して社会に出ても、応援されたり支えられたりして豊かな人生を送れるのではないかと思うからです。
また、「Respect Others」ということも学びました。私が海外で感じた「Respect」のイメージは、下から上に敬うというよりも、お互いフラットな立場で違いを認め合うということです。オーストラリアは移民国家のため、違っていることが当たり前で、違いを認めていかないと社会が成り立ちません。相手の良いところを認めた上で、その人に対して何ができるのかを考えることを指導の中では大切にしています。
主体性を尊重し、対話を通じて、問題を解決し、成長する
日々どのような方針で指導していますか?
現在、選手は64名に増えました。そのうち留学生が10人います。ブラジルから2人、オーストラリアから2人、台湾から6人です。日本にいながらにして、自分がやりたかった国際感覚を養うことができるチームになってきました。しかし当初は日本人と留学生のチームワークがうまくいかないという課題がありました。
チーム内の課題をどのように解決したのですか?
選手たちが主体的に考えて練習を進めることを意識しました。そのために日本人・留学生問わず、意見を出してもらいます。例えば練習や試合が終わった後も、監督が話して終わりではなく、必ず選手たちに話をさせる機会を設けます。自らの手で課題をクリアしてチームワークを高めて欲しいからです。
その際、コミュニケーションが鍵になると思いますが、言語はどうしていますか?
私が通訳することもできますが、それではコミュニケーションの機会を奪ってしまうので、あえて少し引いて見守っています。そうすることで、彼らはカタコトの英語で話し合い、理解し合っていきます。日本にいたらそのような経験はなかなかできません。おそらく多くの日本人は外国人と会った時に、一歩引いてしまうと思いますが、彼らはそのフィルターが外れていると思いますね。
学生の能力を引き出すきっかけづくりを
高校教員として仕事の面白い部分はどこでしょうか?
様々な面において自分が発信してチャレンジできることが面白いです。開校してまだ8年の高校ですので、伝統が築かれている過程にあります。また留学生が多いので、日本の一般的な高校のルールを一辺倒に押し付けてもうまくいきません。開志国際高校のスタイルはどれが正解なのか、生徒や先生たちと話し合いながら作っていけるというのが、とても大変ではありますが、楽しさややりがいを感じています。
開志国際高校をどんな学校にしていきたいですか?
世界や全国から生徒が来てくれることも、もちろんありがたいのですが、地元の子どもたちにも、「この高校に行きたい」ともっと思ってもらえるように努めています。そして卒業生が胸を張って「開志国際高校の生徒でした」と言える。教職員が胸を張って「開志国際高校で働いています」と言える。学校全体が活き活きとし、新しいことに挑戦している。そんな学校にしたいですね。
教師として大切にしていることは?
教師は生徒に教えることがメインだと思われがちですが、“個々の能力を引き出すきっかけを与える”のがいちばんの仕事だと思います。そのためには「言葉」が大切。自分自身も恩師に教えられて成長してきましたが、振り返った時「あの先生、あんなこと言っていたな」と、最終的に残っていたのが、その方の言葉でした。学生の人生の指針となるような言葉を伝える。それが教育者、指導者としての役目だと思います。
サッカー部を日本一に、その先は海外進出も
NSGグループの中での連携を指導に活用されているそうですね。
ありがたいことに、アルビレックス新潟やJAPANサッカーカレッジなど、様々なサッカー関係者の方とご縁をいただき勉強させてもらっています。例えばアルビレックスの講習会に参加させていただいたり、スペイン人のメソッド部門のコーチングスタッフの方に開志国際高校に来て指導していただいたりなど。世界基準に触れることによって、世界で通用する人材を育成していけたらと思います。
これからのキャリアについて考えていることはありますか?
まずはサッカー部を日本一の集団にしたいです。それは結果だけでなく、「Good Game」を追求した中で、日本一の集団に。その中で、私も指導者として実績や経験を積み、日本だけではなく世界を視野に置きながら力をつけていきたいですね。ここで得た経験をもとに、海外に出ていって指導者として活躍する、あるいはサッカーを通じて若者たちや地域社会のニーズに対して発信するようなチャレンジは、常にしていきたいと思っています。
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