弱冠31歳で病院の事務長に着任 病院経営の安定化に向け職員と奮闘
医療法人社団 共生会 中条中央病院 / 渡邉 貴広

2021.07.16 Fri
PROFILE
渡邉 貴広
医療法人社団 共生会 中条中央病院 事務長
新潟市出身。福島県の大学を卒業後、医療・福祉システムを販売・開発する会社に就職。その後、2012年にNSGグループに入社し、高齢福祉事業、障がい福祉事業、児童福祉事業を展開している愛宕福祉会に配属。総務部で情報システムの管理のほか、理事会等の運営や資料作成、行政への申請業務、施設の設備の導入・発注など幅広い業務を手掛ける。2018年にNSGグループが事業継承した中条中央病院の事務長に抜擢。31歳で経営管理を任され、地域医療を支える中核病院の収益向上・経営安定化に取り組んでいる。
社会福祉法人で総務部に所属。
31歳の時に異動の辞令が。NSGグループが事業継承した病院の事務長に任命される。
異業種、慣れない環境…でも、迷わずチャレンジする事を選んだ。
壁にぶつかっても、目の前の一つひとつの仕事に集中。
病院職員との協力関係を築きながら収益向上に取り組む。
院内に新風を吹き込み、課題である経営の安定化に奮闘。
今後も地域の方々から、信頼される病院であり続ける。
そんな行動力・実行力に溢れる渡邉さんが大切にしている事とは

地域医療を支える中核病院の裏方・事務長として活躍中

中条中央病院はどのような特徴を持った病院ですか?

内科、小児科、整形外科、眼科、皮膚科、歯科口腔外科、​リハビリテーション科といった多様な診療科があり、地域の中核病院としての役割を担っています。

地域の住民の皆さまからはどのような期待が?

胎内市で唯一の救急指定病院としての役割は非常に重要だと認識しており、救急車の積極的な受け入れなど、救急医療に力を入れています。また、胎内市は高齢化が加速している地域で、ご高齢の方々を含め地域の皆さまが安心して暮らせるように、我々の提供する医療を進化させながら提供し続けていかなければならないと考えています。

事務長である渡邉さんの役割は?

総務、経理、人事などの管理業務が主な仕事です。その他、経営計画の立案なども携わっています。また、当院は事業継承によりNSGグループに加わった病院なので、職員の皆さんに『NSGグループとは何か』ということをお伝えすることも大切な仕事だと思っています。

伝統ある病院の経営の安定化を任される

若くして病院の経営の安定化という大役を任された時の気持ちは?

辞令が出たのは31歳の時。「なぜ若輩者の私が」というのが正直な気持ちでした。それまでは様々な福祉サービスを提供する愛宕福祉会の総務部で働いていたので、畑違いな医療分野の、しかも経営管理を任されるとは、まったく予想していませんでした。しかし若手にチャンスをどんどん与えるのがNSGグループの長所の一つ。私にそのチャンスが巡ってきたのであれば、迷わずチャレンジしてみようという気持ちでした。

着任後はどんな苦労がありましたか?

経営母体の変化によって、職員の皆さんも少なからず動揺があったはず。そのような状態で、私に何ができるのだろうか?と不安に感じながら着任したことを覚えています。しかし日常の業務は待ってはくれず、課題や依頼事が絶え間なく押し寄せ、その都度判断を迫られる毎日。ただ必死で取り組むことしかできませんでした。

当時の厳しい状況をどのように乗り越えましたか?

ふとした時に自分を客観的に見て、思い描いていた理想と、実力とのギャップに萎縮していることに気がつきました。背伸びし過ぎて、無理をしていたのだと思います。それ以来、心に留めて大切にしていることは、目の前の仕事にフォーカスを当てて、それに一生懸命取り組むこと。そして自分のできる範囲を徐々に広げ、現状をより良くしていく。そういう考えで取り組むと、仕事が以前よりスムーズに進むようになっていると感じます。

NSGグループに入社するきっかけは?

大学卒業後、医療システムを販売・開発する会社に勤めていたときに、「これからは医療や福祉の現場にもITリテラシーの高い人間が必要だ」と感じました。数年後、より自分の力を発揮できる環境を求めて転職活動をしていたところ、ITに強い人材を求めていた愛宕福祉会に入社が決まりました。愛宕福祉会では6年間総務部に所属し、ネットワークやサーバーの管理といった情報システム系の業務のほかに、理事会等の運営や資料作成、行政への申請、施設の設備の導入・更新なども担当していました。

今考えるとなぜ、病院の事務長に抜擢されたのだと思いますか?

愛宕福祉会では総務部として様々な業務を経験させてもらいました。最初は慣れずに苦労しましたが、徐々に仕事を覚えていくうちに施設の現場で働く皆さんから頼ってもらえるようになりました。おそらくそういった私を見て、チャンスを与えてもらえたのでは…と私なりに解釈しています。

着任した時の経営上の課題は?

医師を含め医療スタッフ全体が患者様やそのご家族に対して真正面から向き合った医療サービスを提供していたのですが、高齢化に伴い国の医療制度が大きく変化する中で、収益が上がりにくい状況でした。患者数が下降すると、当院の収益は減り、経営は厳しくなります。しかし医療スタッフは日々の治療に集中していて、現状分析や経営上の課題抽出にまで手が回らない。着任して、そのような印象を持ちました。

では、どのように改善していったのですか?

経営数値に関する資料を見れば改善策を考えること自体は可能です。しかし、現場の方々の協力なしには実現できません。現場の皆さんが持っている医療のプロフェッショナルとしての意識を尊重すること。そして事務方からの提案に賛同してもらえるよう、見やすくわかりやすい提案資料の作成や院内プレゼンを繰り返し行うこと。現場の皆さんに関心をもってもらってから、提案に賛同してもらうまでのプロセスを特に意識しました。

更なる経営基盤の安定で永く愛される病院に

具体的にはどのような経営の改善策を行ったのでしょうか?

これは一例ですが、看護師の働き方を見直しました。長年の習慣・体制に対し、現場スタッフの立場に立って考え、病棟・外来の看護師が協働し効率的な応援業務体制を築くことで新たな加算を取得できるようになりました。そのほか、入院や退院時の流れがより効果的になるような取り組みもしました。それには医師をはじめ複数の部署の協力が不可欠でした。そこで、特定の疾患に対しての入院はこの病棟に、また、介護施設等からの入院に対してはこの病棟にと特別なルールを定め、退院先との連携強化も実施しました。そういう取り組みを積み重ねることで、定期的な増収に結びつくようになりました。

また、そうした取り組みにより収入を安定化させることも重要ですが、それ以上にまず患者様から選ばれる病院であり続けることが重要だと考えています。当院を利用する患者様に診療内容に満足してもらうこと、何か不調があった時には真っ先に当院を選んでもらうこと。私が着任する以前からずっと当院が大切にしてきていることだと思いますが、これからも1番大切にしていかなければいけないことだと思います。

地域の中核病院としての今後の課題はありますでしょうか?

私は裏方なので、直接患者様に対してできることはありません。ただ、この病院がこの街にあり続けることは、その地域の人たちにとっての安心につながると思います。しかし当院の継続のためには、財政基盤の安定が必要です。それに取り組み責務を全うすることで、少しでも地域医療に貢献できればと思います。

渡邉さんの今後の目標は?

着任当初は「若輩者の私に何ができるのか」と私以上に職員の皆さんが不安に感じていたことと思います。赴任して3年が経った今、職員の皆さんとの連帯感が徐々に高まってきたのではないかと自負しております。今は皆さんと一緒にこの病院をもっと良くしたいという思いを強く持っています。地域の皆さまに信頼され、安心して医療を受けられる病院を目指して、職員の皆さんと一緒に邁進していきたいと思います。

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