農業の新時代を切り拓きたい 若い感性とパワーで挑戦中
株式会社アグリライフ  / 後藤 竜佑

2021.08.18 Wed
PROFILE
後藤 竜佑
株式会社アグリライフ  代表
新潟市出身。代々続く農家の9代目。高校卒業後、新潟県農業大学校で稲作の基礎を学ぶ。卒業後、アメリカカリフォルニア州で1年半農業研修に励む。帰国して新潟市内の農業法人で働き、23歳の時に独立して株式会社アグリライフを創業し、NSGグループの一員に。同グループで給食事業を営む株式会社日本フードリンクと連携し、循環型農業によって栽培した米を学校給食に提供。そのほか、新潟でいちばん収穫時期が早い極早生米の「五百川」の生産にも力を注いでいる。若手農家の育成にも携わり、新潟の農業の未来に尽力している。
食に関する視野を広げるために農業大国アメリカに農業研修へ。
志の高い同年代の仲間から刺激を受ける。
帰国後、新潟の農業法人に勤め、23歳で独立し起業。
NSGグループの大学等の食堂に新鮮・安全な作物を供給している。
米作りを通じて積極的に地域貢献へ取り組む。
ICTを駆使した先進的な管理とチームワークで農作業の効率化を図る。
極早生や作物の通年出荷にチャレンジ中。
そんな後藤さんが耕したい農業の新時代とは。

食の広い世界を見たいと、アメリカで農業研修を

もともと農業には興味があったのですか?

実家は兼業農家だったので、食に携わる仕事がしたいという思いが小さい頃からありました。高齢化が進んでいく中で農業を辞める人が多いので、若い自分が始めればチャンスがあるかもしれない。そのような思いで農業への道を歩み始めました。

 

株式会社アグリライフの立ち上げまでを教えてください

高校卒業後、新潟県農業大学校で稲作の基礎を学びました。卒業時に就職か進学かで迷いましたが、広い世界を見たいと思い、国際農業者交流協会が主催する農業研修で、アメリカのカリフォルニアに行きました。向こうの農場に1年間住み込みで働き、後の半年間は農業経営を勉強するというようなプログラム。終了後は日本に戻ってきて、地元の農業法人で研修させてもらいました。1年半後の23歳の時に独立し、株式会社アグリライフを立ち上げました。

アメリカの研修で得た学びは?

農業は環境によって方法が変わってくるので、アメリカの研修で学んだことをそのまま活かすのは難しいので、新潟の気候を考えて応用する事が必要ですが、基本となる考え方や方法論は身につけることができたとは思います。

また農業を志す若者が全国から集まっていたのですが、意識の高い人が多く、中にはアメリカの農業技術を取得して海外展開したいと考えている人もいました。しっかりとしたビジョンを持っている同世代と出会って刺激を受けました。自分も負けずに頑張ろうとメンタル面にも変化がありましたね。

 

 

ICTの駆使とチームワークで作業の効率化を図る

農作物を栽培する上で、失敗や苦労したことはありますか?

農業の基本は「観察」です。植物って何も言わないじゃないですか。だから観察して何が足りないか、何が必要なのかを見て感じとることが重要。でも最初は稲作の面積を広げ過ぎて観察が疎かになり、管理しきれなかったことがありました。その経験を糧に、今では安定して収穫できています。本当に失敗から学ぶことは多いですね。

その経験を生かして、今はICTを活用して管理しているそうですね

 田植えの後は水管理が必要ですが、当社所有の田んぼはいろんなエリアに点在しているので管理に手間がかかります。もしも水田と水田の境から水が漏れるようなことがあると、稲の生育が悪くなり水不足で枯れてしまうことが起こります。そこで水漏れがないかをチェックする作業を日々行なっています。その管理に役立つのがスマートフォンのアプリ。作業記録や生育記録が入力・閲覧できますし、所有する田んぼに関する情報を地図上で照らし合わせられるのもメリットですね。

仕事をする上で大事にしている事は?

いかにチームワークを強化して事業拡大していくかですね。農作業自体は慣れてしまえばそれほど大変なことではありませんが、チームでいかに効率的に作業し、利益率を上げていく仕組みを作るかということに苦心しています。お米や野菜などの農産物は種を蒔いてから収穫までの期間が長いので、目の前の単純作業に追われているとゴールが見えてこない。農作業の醍醐味は日々の作物の成長、そしてなんといっても収穫の喜びです。チームとしての共通意識をしっかり持ちながら、喜びを忘れずに良いものを作っていきたいですね。

米作りを通じて積極的に地域貢献に取り組む

栽培したお米はどのような人たちに届けているのですか?

毎年120tほど収穫していますが、NSGグループの株式会社日本フードリンクと連携して、新潟医療福祉大学や新潟食料農業大学、開志専門職大学の学食や学生寮などに提供させていただいています。日本フードリンクには営業面を請け負ってもらっているので、生産に集中できてとても助かっています。それも大きなグループメリットですね。

地域貢献の活動もされているそうですね。

地元の小・中学校に出向いて食育の授業を行っています。その時に栄養面からも指導するので、日本フードリンクの栄養士の方から、「子供たちにこう説明した方がいいよ」「こういう情報を盛り込んだ方が分かりやすいよ」などとアドバイスをもらっています。おかげで充実した授業になりました。また昨年はネギの収穫体験を実施しました。地域社会の一員として、今後も様々な地域貢献活動を行っていきたいですね。

色々な品種の生産や栽培方法にもチャレンジ

今、力を入れている商品はありますか?

「五百川」(ごひゃくがわ)という極早生米(ごくわせまい)の生産に取り組んでいます。通常、新潟の平野部の稲刈りは9月中旬頃から始まります。しかしこの五百川は8月上旬に刈取りが可能。スーパーなどの流通業のお客様からは「お盆の帰省や旅行で新潟に来る方に新米を味わっていただけたら、そしてお土産にしていただけたら…」という高い期待をいただいています。。確かに苦労はありますが、新しいことに挑戦するのはワクワクするものですね。

今後やってみたいことはありますか?

1年間通して地物を提供していきたいと考えています。当社では給食にお米の他に、食材も提供していますが、新潟の野菜は旬が意外に短い。例えば「じゃがいも」の場合、6月から7月が旬で、あとは他県などから仕入れています。工夫して秋に収穫できれば、保存して冬や春に出荷が可能になります。そのように1年間通して地物が提供できたら、子ども達に新鮮な作物を食べてもらえますからね。

これからの農業について

農業を志す若者に向けて、行なっていることはありますか?

NSGグループの新潟農業・バイオ専門学校のカリキュラムの一環として、週に1回学生にインターンシップとして来てもらい、稲作を指導しています。その中から新潟の農業を支える人材が育つとうれしいですね。昨年はコロナの影響で中断していますが、今年から再開しています。

 

新潟の農業の未来をどう考えていますか?

若者の新規就農者が増えてほしいですね。2020年度の実績データで言うと、新潟市で農業を辞める人が年間約700人で、新規就農者が約70人という現状です。今、大学や専門学校を卒業してすぐ独立する方はほぼいなくて、私のように農業法人に就職して何年間か働いてから独立する人が多い。今後は独立志望の方も雇い入れて、一緒に新潟の農業を盛り上げていきたいですね。

 

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