障がい者と地域社会をつなぐハブになるため、専門部門を立ち上げ様々な啓発活動を展開中。

2023.08.31 Thu

(株)NSGソシアルサポートでは、障がいがある方の個性を活かせる就業環境を提供するなど、雇用促進と社会貢献の実現を目指す事業活動を行っています。その中でも2021年度に立ち上げたインクルージョン部門では、地域とつながりながら障がい者の就労体験やセミナー開催、商品販売のコーディネートなど、多彩な啓発活動を実施中です。

インクルージョン部門を立ち上げたねらいや、具体的な活動内容、今後の目標などを、(株) NSGソシアルサポート 代表取締役社長 樋口督水さんと、同社ソシアルトライフ(就労継続支援B型)職業指導員・ジョブコーチ 松村誠さんに伺いました。

障がい者の啓発活動を通じて、地域とのつながりを作りたい。

― インクルージョン部門を設けて活動しているそうですが、どのような部門なのでしょうか。

樋口 主な業務は、障がい者の方が素敵にかっこよく働いているところを発信すること、そして地域とつながり仲間をつくることです。具体的には障がい者就労・雇用のコーディネート、障がい者福祉施設製造した商品の販売、障がいの擬似体験セミナーの企画・運営などです。

松村 他社で言うところの広報部門に近いかもしれませんが、それだけで終わるのではなく、活動を通じて地域とのつながりを作り、深め、共感してくれる仲間を増やしたい。私自信も生まれながらに障がいを持つ一人ですが、そんな思いを込めて活動を進めています。

― アルビレックス新潟の試合で障がいのある方の就労体験をされているそうですね。

樋口 はい。ホームゲームの時に、スタジアム周辺や観客席の清掃やゴミ回収活動などを行っています。参加者の中には人前に出るのが不得意な方がいたのですが、勇気を出して頑張ってみたら、サポーターの方々から「ありがとう!」という言葉を掛けてもらえたと感激していました。

松村 スタジアムでの成功体験が自信となり、その後の就職に向けて積極的にチャレンジできたケースもありました。このように、もっと働く機会の提供に力を入れていきたいですね。

 

障がい者の働く力を応援するギフト商品をコーディネート。

― 障がいのある方が作った商品をギフトセットにして販売されているそうですね。

樋口 地域の障がい者福祉施設でお菓子などを作っていますが、施設によっては販売するノウハウを持っておらず、世の中に出回るケースがまだまだ少ない。それらのお菓子のおいしさを知っているからこそ、販売のお手伝いができないかと考えていました。そんな時に、もともと障がい者の業務委託でご縁のあった、建設業等を営むスギサキグループ様とギフトセットの話が持ち上がりました。

松村 「障がいのある方たちが作っているお菓子を詰め合わせにして、お中元などに活用しませんか」と提案したところ、「ぜひ応援したい」と話が進み、『SDGsギフトセット』が生まれました。働く喜びや社会に貢献する生きがいが込められたギフトが、全国の取引先様へ届けられています。

樋口 ギフトセットは、営業マンの方が直接持っていくこともあるそうで、ギフトセットの背景を説明すると、共感や関心を持たれるケースが多いそうです。中には「そのような考えを持った会社なら取引をしたい」という嬉しい言葉をいただくこともあるのだとか。他社との差別化を図りながら、社会貢献もできる意義深い商品だとご認識いただけているようです。

― 販売するにあたって苦労した点はありましたか?

樋口 納期の調整ですね。お中元・お歳暮にはシーズンがあるので、タイミングをずらすわけにはいきません。しかし発注数が急激に増えるので作る側も大変です。それに賞味期限もあるので、私たちが間に入り、試行錯誤しながらお客さまのオーダーに応えられるように努めています。

松村 製造する障がい者の皆さんはコロナ禍で作る機会が減った辛さを体験しているので、少し忙しいくらいの方が頼られているという実感ができて嬉しいそうです。モチベーションがアップして、納期に間に合わせようと頑張ってくれています。

 

知的障がい・発達障がいを疑似体験し、偏見や誤解のない社会を。

― 他には、障がい者の疑似体験をするセミナーの開催もされているそうですね。

樋口 知的障がい・発達障がいのある方の考え方や感じ方を擬似体験するセミナーですが、新潟市障がい者雇用支援企業ネットワーク“みつばち”の活動としてはじまった「みつばちキャラバン隊」は2021年にアフリカンベーカリーナミテテのオーナー工藤さんのお声がけの元発足し、弊社からは松村を中心に2〜3名のスタッフが参加して運営にも関わっております。月に1回のペースで、通算20回ほど県内各所に出向いています。

松村 もともと山形県の団体からサポートをいただき、ノウハウも学びながら始めたものです。回を重ねるたびに、スタッフで話し合いながら教材をブラッシュアップしています。参加してくださった方が活動に興味を持ってくださり、今はスタッフが総勢10名ほどに増えました。

樋口 知的障がい、発達障がいの場合、身体障がいの方と違って、一見すると外見は健常者と変わらないので、障がいを理解するのが難しい面があります。だから当セミナーでは、「どのような気持ちになるのだろう」「どんなふうに困っているのだろう」という観点で、感覚的に障がいを体験してもらうことができるようなプログラムを行っています。

― 具体的にはどのような疑似体験をしているのですか?

樋口 固い内容ではなく時には笑顔もこぼれるような内容で、具体的には…参加してのお楽しみです(笑)。身の回りにある本当に簡単なものを使って行うので、お子さんやお年寄りでも、もちろん障がいを持っている当事者の方でも体験できます。

松村 このセミナーを通じて知ってもらいたいのが、「障がいも個性の一つだ」という事です。健常者も障がい者も個性があって、感情や価値観も違います。それを認め合うことで偏見や誤解が少ない社会づくりにもつながりますから、とても大切な活動だと思っています。

 

NSGグループ内の企業とも連携し、喜びの声が。

― NSGグループの特例子会社として、どのような連携を図っていますか?

樋口 各企業の障がい者雇用の推進はもちろんですが、様々な業務を委託されています。例えば、(株)イタリア軒からはホテルのオリジナル商品の箱詰めを大量に受注。それまでは社内で行なっていたそうですが、アウトソーシングするということで当法人に声を掛けていただきました。

松村 キレイに箱詰めするにはコツがいる商品だったんですが、なんと予定の半分の納期で納品することができ、完成度も高いと褒めてもらいました。期待に応える事が出来た事で継続的に受注しています。その他に、(株)幻の酒からも同じような商品の箱詰め、教育関連の法人からは校内の清掃業務を受注しています。

樋口 NSGグループ内には業種の幅が広くたくさんの種類の業務や職種がありますから、多様な個性を持つ方々が活躍できると思います。今後は業務を委託していただいた企業に「SDGs活動の証明書」を発行したいと考えています。企業としても、顧客や株主、社会に対してのアピールになると思いますから。

 

障がい者雇用の促進を通じて、誰もが活躍できる社会に。

― これから障がい者雇用の促進をどのように進めていきたいと考えていますか?

松村 これまでお話してきたようなギフトやセミナーの事例をインクルージョン部門から発信し、業務を継続していくことで地域に障がい者が活躍できる環境を整えながら、働く場を作り出していきたいと思います。NSGグループだけに留まらず、もっと広く情報を届けていきたいですね。

樋口 引き続き地域の企業に声をかけて、私たちのギフト制作やセミナーといった活動を知っていただくとともに、障がい者との接触体験を増やしていければと思っています。そうして認知を広めていくことが障がい者の活躍できる環境を整えることに繋がると思いますし、雇用に限らずインターンシップや業務委託などでも「障がい者に活躍してもらおう」となる選択肢が拡がってくれればと考えています。

松村 私も障がい者の一人として、彼ら彼女らの視点に立って雇用を推進していきたいですし、障がいのあるなしに関わらず、誰もが活躍できる地域社会づくりのお手伝いができればと思っています。

 

障がい者と地域社会をつなぐのがインクルージョン部門の役割。

― これからインクルージョン部門が目指すものとはなんでしょうか?

樋口 障がい者施設で作る商品と企業をつないだり、雇用という面で障がい者と企業をつないだり。そんな「障がい者と地域社会とのハブ」になることです。

松村 まだまだ障がいをお持ちの方と接する機会は少ないので、距離を感じる方もいるのではないでしょうか。だから私たちがハブとなり、「みつばちキャラバン隊」や「SDGsギフト」などをもっと推進していきたいですね。

樋口 当法人では「選択肢を拡げる」ことがミッションの一つです。私たちが行ってきた活動や、障がい者の雇用などで、様々な雇用の選択肢を増やしていきたいです。そのためには、いろんな提案やアイデアを出して、新しい取り組みを増やして地域の皆さんとのハブになれたら。それが一つずつカタチになれば、すごくワクワクして楽しい社会になると信じています。

 

株式会社NSGソシアルサポート

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障がいがあるなしに関わらず働く環境を選択して働き続けられるように、という思いのもと2020年に設立。事業目標は障がいのある方の能力を最大に活かし活躍できる環境を整え、違った個性のある方の多様な働き方を提案し地域社会で多くの障がいのある方が当たり前に働く姿をもっと増やすことです。 また、一般の方々がそうであるように、時間や働く場所、職種を選択できるような地域を作っていくことも目指しています。

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