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節水型乾田直播で描く、新潟発・持続可能な稲作の未来。
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新潟市北区の農業法人ベジ・アビオは、NSGグループの一員としてスマート農業に取り組んでいます。この春からは、従来の稲作に比べて省力化と脱炭素を同時に実現できる「節水型乾田直播(ちょくは)」による米作りのプロジェクトを、JA新潟市や新潟クボタ、新潟食料農業大学などと連携して始めました。作付けしたのは、暑さに強い品種「にじのきらめき」です。
地域農業が直面する担い手不足や耕作放棄地の増加といった課題をどう解決し、次世代へどのように農業を継承していくのか。その未来を見据えた新しい試みに取り組むベジ・アビオの姿勢や思いについて、取締役の加藤 和彦さんにお話を伺いました。
NSGグループ横断のブレストから始まった農業と脱炭素の試み。
― この春からスタートした「節水米プロジェクト」。その立ち上げの背景を教えてください。
加藤 きっかけは、NSGグループ内のグループ横断ブレインストーミング型協議会「ブレスト協議会」でした。組織や事業、地域の活性化に資するグループ横断的なテーマを社員・職員から募集し、有志が議論に積極的に参画するプロジェクトです。そのなかの一つのチームで、「農業と脱炭素」というテーマが取り上げられました。従来型の慣行栽培による稲作は大量の水を必要とし、同時に温室効果ガスであるメタンが排出されます。その課題を解決することができれば、新潟の農業にとって新しい突破口になると捉え、計57a(アール)で経験のない水稲栽培、それもまったく新しい栽培法に取り組んでみました。
― 従来の稲作と比べて、どのような効果が期待できるのですか。
加藤 効果は大きく2つあります。ひとつは先述の通り、「脱炭素」です。試算によると、水を張る回数が少なく期間も短くなることで、メタンの発生が9割程度削減できると見込まれています。もうひとつは「省力化」です。これは生産者にとって大きな経済的メリットになります。
― 省力化できる理由を教えてください。
加藤 通常の稲作では苗づくりから水管理まで工程が多く、毎日の細かな管理が欠かせません。ところが、節水型乾田直播は乾いた田んぼに直接種をまく方式ですので、育苗や代かきといった手間が不要になります。水も必要なときに最小限流すだけでよく、従来型のように毎日の水管理に追われる必要はありません。そのため、労働コストの削減につながるのです。
試行錯誤を重ねる乾田直播栽培の現場。
― 今回の栽培で使用した技術や資材について教えてください。
加藤 今回の取り組みでは「バイオスティミュラント(BS)資材」を積極的に活用しています。植物の力を引き出すために、栄養分を供給する菌根菌や、ビール酵母から取り出した成分を利用した資材です。菌根菌は植物の根に共生し、水分やリン酸などの養分の吸収を高めてくれるため、稲の生育を助けてくれます。ビール酵母は土壌改良に役立ち、根張りを促進する効果があります。
― 実際に栽培してみて、苦労した点もあったのではないでしょうか。
加藤 正直に言えば、試行錯誤の毎日です。まず、今年は春の長雨で予定より1か月も種まきが遅れてしまい、計画通りに進められませんでした。また、大型トラクターを使った作業も当社では初めてで、播種の深さを一定に保つことが難しく、調整に時間を割きました。さらに、雑草と稲の区別が難しく、除草のタイミングに苦労しました。こうした課題を乗り越えた経験は、来年以降に必ず役立つと確信しています。
― 今後改善したい点はありますか。
加藤 作物を作る上で除草が必要になりますが、その効率化が大きな課題ですね。今年は経験不足もあり、雑草の発生に応じて都度作業を行っていますが、回数を減らすことができると考えています。そのために、除草の委託サービスや、AIを用いた雑草予測技術を導入することも検討中です。例えば、衛星データを活用すれば、雑草の発生を事前に予測し、必要なタイミングで最適な除草を実施することが可能です。
省力化と米価の安定を両立させる新しい稲作の可能性。
― 節水米によって、地域や消費者にはどんなメリットがありますか。
加藤 負担が減ることで、一人あたりが管理できる面積が従来の稲作に比べて倍になると言われています。週に一度田んぼを見回る程度で栽培が可能になるため、兼業農家であっても少ない労力で管理できるんですね。その結果として、これまで手が回らなかった農地でも耕作が継続でき、耕作放棄地の拡大防止につながると考えられます。また、生産コストが下がることで、消費者に安価なお米を届けられる可能性が広がります。
― 学生との連携や、次世代への取り組みについても聞かせてください。
加藤 NSGグループの新潟食料農業大学や新潟農業・バイオ専門学校と連携し、生育調査や圃場の管理を学生と共に進めています。そこには、現場の学びを次世代につなげたいという思いがあります。学生の中には、まだ1年生でありながら「節水栽培を本格的に学びたい」と強い意欲を示す学生もいて、その姿勢に私たちも刺激を受けています。
持続可能な地域農業を支える節水米の未来像。
― 初めての収穫に臨むにあたって、出来栄えが楽しみですね。
加藤 今年は猛暑といった厳しい条件もありましたが、バイオスティミュラント資材の効果で、順調に生育が進んでいます。粒ぞろいの良さや光沢のある見た目に期待していますし、食味の面でも従来の水稲に劣らない品質を確保できれば、節水米が実用的な栽培方法である大きな証明になると見込んでいます。
― 今後、この取り組みをどのように拡大していきたいと考えていますか。
加藤 まずは今年の結果を分析することが大切です。収量や品質のデータを取り、改良点を見極めます。その上で、来年は作付面積を広げたいと考えています。将来的には従来型と節水型を使い分ければ、品質重視も省力化重視も実現でき、農業全体の柔軟性が高まります。耕作放棄地の増加にも歯止めをかけ、地域全体の農業を守る取り組みへと発展していくはずです。
― 最後に、このプロジェクトを通じて実現したいビジョンを聞かせてください。
加藤 節水米は単なる農法のひとつではなく、社会を変える可能性を秘めた取り組みです。例えば、学校給食に節水米を使用することで、『この食事でどれだけ温室効果ガス削減につながったか』を数字で示せます。それは利用者にとって安心を感じられるだけでなく、環境意識を高める契機にもなるでしょう。最終的には、新潟から全国へとこの技術を広げていきたいですね。日本が誇る米作りを持続可能で環境にやさしい形に変えていくことが、次世代の農業の使命だと信じています。
農業法人ベジ・アビオ
露地栽培と施設栽培に取り組む農業生産法人。新潟をより元気に・より豊かにする食材の提供とビジネスモデルで新潟の農業を活性化します。野菜の露地栽培。バイオスティミュラント資材を用いた栽培で、環境の変化に強く美味しい野菜を生産しています。環境制御型施設園芸。ICTを活用した環境制御型施設で栽培環境を最適に保つとともに最新のハイスペックな栽培システムにより、トマトの二期作を行っています。
〒950-3105 新潟市北区新富町1419-50
TEL:025-278-8062 / FAX:025-278-8063
本社所在地:新潟県新潟市中央区長潟2-1-4
info@vegeabio.co.jp
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