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新潟から世界へ挑む、大学×陸上クラブ一貫育成モデル。
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新潟医療福祉大学・新潟食料農業大学を軸に、大学とクラブが連携して“育成から強化まで”をつなぐ仕組みが動き出しています。教育・研究・競技を一気通貫で結び、新潟から世界を目指す挑戦について、サトウ食品 新潟アルビレックスランニングクラブ (以下“アルビランニング”)を運営するARC 株式会社代表取締役社長の大野公彦さんと、学校法人新潟総合学園 法人スポーツ推進室 室長の南俊之さんに聞きました。

大野さん(左)と南さん(右)
地域と大学が支え合う、陸上競技の協働体制。
― アルビランニングと大学との連携が始まった背景をお聞かせください。
大野 新潟医療福祉大学とは、長い時間をかけて関係を深め、特にここ10年ほどでパートナーシップが密になりました。大学とクラブが一緒に選手を育てる形も整ってきています。大学にとってクラブは教育・研究・競技力向上に直結し、クラブにとって大学の施設や人材は競技者のトレーニングに欠かせません。
― 法人スポーツ推進室はいつ頃から本格的に動き出しましたか。
南 新潟医療福祉大学では、2017年に学内組織として「スポーツ振興室」が設置され、のちに「法人スポーツ推進室」が立ち上がりました。現在は新潟医療福祉大学と新潟食料農業大学、法人全体のスポーツ戦略を統括する役割を担っています。
― 陸上競技が教育機関と結びつきやすいのはなぜですか。
大野 陸上競技は短距離、長距離、跳躍、ハードル、競歩、投てきなど、種目ごとにまったく異なる専門性が求められる競技であるため、大学レベル以上になると、専門的な指導体制が欠かせません。一方で、競技場という一つの場所で、指導者や練習環境を共有できるという特性があります。大学の監督やコーチが学生と実業団のトップ選手を同時に指導することも可能ですし、小学生から大学生、さらにトップ選手までが同じフィールドで練習できる。こうした「学びと競技が自然に重なり合う環境」をつくれるのが、陸上競技の大きな魅力です。

世界基準の指導へ、競歩をはじめとした強化クラブの歩み。
― アルビランニングに所属する鈴木雄介さんが、新潟食料農業大学の競歩・長距離コーチに就任した理由を教えてください。
南 新潟食料農業大学は2018年に開学した、食・農・ビジネスを中心に学ぶ大学です。その中で、スポーツを大学の個性づくりの一つの柱に据え、強化クラブの立ち上げに取り組んできました。
大野 そこで、大学側から「陸上部を強化クラブにしたい」と相談がありました。世界陸上金メダリストの鈴木雄介さんが競技生活を終え、指導者に転身しようとしていたタイミングと重なり、「これは大学にとっても、陸上界にとっても大きなチャンスだ」と感じました。競歩は強化している大学が少なく、“大学の看板になる可能性を秘めた種目”。そこで、競歩に特化した強化を提案し、鈴木コーチを迎えることになりました。
― 鈴木コーチの就任によって、どんな変化が出ていますか。
南 着任後、競歩を希望する高校生の進学先として認知が広がり、全国から生徒が集まり始めています。初年度は8名ほどで、その大半が県外の高校生からでした。関西・東海・九州地方など、各地から進学者が来ていて、競歩に集中して取り組める環境があるという認識が広がりつつあります。
― 競歩以外でも、アルビランニングとの連携はありますか。
南 はい。例えば、短距離コーチは同クラブからの出向という形で着任しており、女子400mハードルのトップ選手として活躍し、現日本記録保持者でもある久保倉里美さんもアドバイザーとして関わっています。複数のスタッフが同クラブから派遣され、大学とクラブが一体で指導する体制が整っています。

医療系総合大学が支える、多職種連携のアスリート支援。
― 新潟医療福祉大学との連携についても教えてください。
大野 新潟医療福祉大学は、医療・健康・スポーツに強みを持つ大学で、当クラブにとっても親和性が高い存在です。特に「女子長距離」で深い連携があります。オリンピック・世界陸上にも出場した大島めぐみさんを派遣して、女子駅伝チームを継続的に強化しています。
― 他にも連携している点はありますか。
南 医療系総合大学としての強みである「アスリート・サポート・システム(NUHW ASS)」が大きく貢献しています。リハビリ、栄養、動作解析、フィジカルトレーニング、女性アスリート検診、メンタルまで多職種で支える体制があり、他大学でも例が多くない包括的なマルチサポートのかたちです。また、新潟リハビリテーション病院とも連携し、診断から治療、復帰までを一貫してサポートできる体制が整っています。
― 室内走路や室内投てき場など、設備の特徴も教えてください。
南 雪の多い地域でも年間を通じて練習量を確保できるよう、室内走路や室内投てき場を整備しています。室内投てき場では、砲丸・円盤・ハンマーの練習が可能です。アスリートサポート研究センターによる動作解析やフィジカルチェックとも連動しており、選手は日常的に専門家の視点から助言を得ることで、ケガの予防やパフォーマンス向上を図れる環境になっています。
大野 当クラブの選手も施設を活用しながら、大学の研究・教育と連動したサポートを受けられます。大学とクラブが役割を補完し合う関係が根づいています。

― ジュニア陸上教室を大学で開催している狙いを教えてください。
大野 私たちは県内外でジュニア陸上教室を行い、将来の陸上競技人口の拡大に取り組んでいます。小学生が陸上に触れる機会をつくることで、「陸上が好き」という気持ちを育てたいですね。
南 大学にとっても、充実した施設で子どもたちに走ってもらうことは価値があります。「ここで練習してみたい」「この大学に進学したい」と感じてもらえるきっかけになり、地域貢献と大学の魅力発信につながっています。
新潟から世界へ、陸上一貫育成体制のこれから。
― 高校から大学、さらにアルビランニングへと続く“育成ルート”について、今後の展望をお聞かせください。
大野 ここ数年で、この強化スキームが機能し始めました。実際に、ジュニア期からクラブに関わり、県内の高校・大学へ進んで全国大会で結果を残す選手も出ています。例えば、新潟食料農業大学の水崎翔選手は小学生時代から当クラブのスクールに所属し、開志国際高校、新潟食料農業大学へと進みU20日本選手権100mで5位入賞を果たしました。開志国際高校出身で現在、新潟医療福祉大学の渡辺豹冴選手は砲丸投げで日本インカレ優勝、国民スポーツ大会優勝。“新潟で育ち、新潟で強くなる”モデルが、成果を上げ始めています。
南 この流れを支えるのが、学内の組織的な支援体制です。競技力強化部門、広報、指導者育成が連携し、研究団体、医療機関、行政機関とも協働しながら、一貫した育成システムを構築しています。
― 新潟に拠点を置いて全国トップになった選手も出ていますね。
大野 北原博企選手は開志国際、医療福祉大、アルビランニングという完全な“新潟ルート”で世界を目指せる所まで来ましたし、長谷川直人選手のような地元にいながら日本代表レベルに到達する例も増えています。だからこそ、ジュニアの頃から正しい指導を受け、大学で専門性を磨き、実業団で世界に挑む流れをさらに確かなものにしたい。そして、新潟の子どもたちが「陸上をやるなら新潟が一番いい」と胸を張って言える地域をつくりたいですね。
南 今後はこうした連携をより強化し、優秀な選手が県外に進学せずとも地元で挑戦を続けることができ、NSGグループ内で育ちながらプロや世界レベルのステージへと進んでいく仕組みをさらに磨いていきたいと考えています。最終目標は、NSGグループ出身の選手が世界の舞台の頂点に立つことですね。
学校法人新潟総合学園
これからの時代をリードし地域・国家の未来を担っていく人材の育成を目指します。事業創造大学院大学、新潟医療福祉大学、新潟食料農業大学の3つの大学を統括・運営しています。
新潟県新潟市北区島見町1398番地
TEL:025-250-0517 / FAX:025-250-0751
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