採用試験もオンラインへ。 企業が求める不正対策と受験機会の拡大

2026.05.21 Thu

AIやリモート技術の普及により、試験や評価のあり方は大きく変化しつつあります。オンライン試験の利便性が高まる一方で、不正や真正性への懸念はなお残されています。

こうした中、2021年に株式会社サーティファイが開発した「スマート入試」は、2つのカメラと7つのAIを活用し、受験機会の拡大と公平性の担保を両立するオンライン試験システムとして進化を続けています。現在では入学試験に加え、採用・昇格試験などにも活用の幅を広げ、単なる監視にとどまらず、「誰がどのように取り組んだのか」という真正性や思考プロセスの可視化にも挑戦しています。

今回は、スマート入試の開発・推進を担うプラットフォーム事業部 部長 蛭子拓夫さんに、導入拡大の背景や今後の評価のあり方について伺いました。

オンライン試験は「やむを得ない手段」から「選ばれる手段」へ

― スマート入試は、開発からどのように進化してきましたか。

蛭子 スマート入試の中核技術の特許取得に加え、関連する技術の特許も複数申請中です。サービスの独自性がより明確になってきました。また市場環境も変化し、オンライン試験は「やむを得ない手段」から「積極的に選ばれる手段」へと移行しています。現在は、単にオンラインで試験を実施するだけでなく、「オンライン環境でも、試験の公平性・信頼性・真正性を担保し、学びの質保証につなげたい」というニーズが高まっています。

 

― オンライン試験へのニーズが高まっている背景を教えてください。

蛭子 AIの普及により、不正のハードルが下がっている点が挙げられます。いわば“カンニングの民主化”が起きています。これまで手間のかかった不正行為も、現在ではスマートフォン一つで行える可能性があります。大学のレポート作成や試験においてもAI活用が広がる中で、試験や評価そのものの前提が変化しつつあります。

留学生入試から採用試験まで。広がるオンライン受験のニーズ

― スマート入試は、どのような場面で活用が広がっていますか。

蛭子 教育機関では、国立大学を含め導入が進んでいます。特に留学生入試では、渡航せずに受験できる環境が求められており、国際競争力の観点からも重要になっています。企業においても、海外拠点や遠隔地の受験者が自宅など現地で試験を受けられる環境は、受験機会の拡大につながっています。

 

― 教育機関と企業では、ニーズに違いはありますか。

蛭子 教育機関は公平性、合理的配慮、多様性の確保や国際化対応が中心ですが、企業はそれに加えて採用競争力の強化という側面が大きいと考えています。実際には企業からの問い合わせも多く、ニーズの高まりを感じています。

 

― なぜ企業での需要が高まっているのでしょうか。

蛭子 AIによって入社試験の不正が容易になっていることが背景にあります。調査では、オンライン試験で蔓延する不正行為や不正対策が十分でない環境に対する不信感が内定承諾時の企業評価に影響を及ぼす可能性があることも示唆されています。そのため、不正対策は単なる試験運営の課題ではなく、企業の信頼性やブランドにも関わるテーマとなっています。

 

― 採用活動への影響についてはどのように感じていますか。

蛭子 現在は、企業が応募者を選ぶだけでなく、企業もまた「選ばれる」時代です。場所や時間に縛られない受験環境は、応募者の裾野を広げる上でも重要な要素になっています。

AI時代に問われる、「本人がどう考えたか」という評価

― AIの普及によって、試験や評価はどのように変わっていますか。

蛭子 興味深いのは、アナログ回帰が起きていることです。AIが進化するほど、「人がどのように考えたか」を重視する傾向が強まっています。その一例として、スマート入試では手書き回答を組み合わせた仕組みを提供しています。解答用紙への手書き回答をオンライン化する場合、PCカメラのみでは試験中の不正リスクや、提出時の加筆・差し替えといった課題が残ります。スマート入試では2つのカメラを活用することで、受験中から提出時まで一貫した確認が可能となり、手書き試験における真正性や公平性を担保できる点が特徴です。

 

― 手書きの回答を組み合わせることには、どのような意味がありますか。

蛭子 思考の過程を確認できる点が挙げられます。結論や正答を出すことは、AIが得意としています。だからこそ「どのように考え、その結論に至ったのか」という思考の過程を確認する重要性が高まっていると感じています。留学生の日本語能力の確認や、理系の複雑な数式の表現評価にも適しています。企業でも、フェルミ推定(※1)のように、思考プロセスを重視する課題では、手書きの方が適しているケースが少なくありません。
(※1):実際に調査困難な数値を、限られた情報と常識をもとに論理的に概算する手法

既存システムに後付けできる監視機能

― 新たな取り組みについて教えてください。

蛭子 現在、「フェアテス」という監視機能に特化したサービスを開発しています。既存の試験システムやLMSに後付けできる仕組みで、新たにシステムを一から構築する必要がありません。すでに通信制大学の単位認定試験などで導入が進んでおり、これまでは困難だった会場試験のオンライン化が広がりつつあります。運営側の負担軽減と、受験者の利便性向上の両方に貢献できるサービスです。

 

― スマート入試ならではの強みはどこにありますか。

蛭子 2つのカメラによる監視は他に多くは見られません。加えて、長年の試験事業の実績と、自社試験での運用を通じた改善サイクルが強みになっています。自社の検定試験でもスマート入試を実際に使用しているので、カンニングの手口が進化しても、自分たちでいち早く気づき、改善につなげられます。

 

― 今後は、スマート入試はどのような役割を担っていくのでしょうか。

蛭子 これからは「不正を防ぐ」だけでなく、「本人による正当な行動であることの証明」が重要になります。学歴だけでなく、学習プロセスや行動そのものが評価対象になる中で、その真正性を担保する仕組みの必要性が高まっています。

 

― 評価のあり方は、どう変わっていくのでしょうか。

蛭子 例えば「間違ったらどのように学習して修正したか」「どれだけ継続して学習したか」といった行動そのものが評価対象になります。その行動が本当に本人によるものだと保証できなければ、評価は成立しません。私たちは、本人の行動を証明できる評価インフラを目指しています。

努力が正しく評価される社会を目指して

―グループだからこそ生かせた強みはありますか。

蛭子 大学等の教育現場のリアルな課題に触れながら開発できたことは、大きな価値だと感じています。現場の声を反映できたことで、実用性の高いサービスづくりにつながりました。

 

― 最後に、スマート入試が社会に提供できる価値を教えてください。

蛭子 「努力が報われるインフラ」だと思います。不正が当たり前になってしまうと、まじめに取り組む人が損をする社会になってしまいます。だからこそ障がいの有無や置かれた環境に左右されず、真っ当に取り組んだ人とその態度や行動が真っ当に評価される環境をつくることが重要です。スマート入試は、単なる試験ツールではなく、これからの評価のあり方を支える「インフラ」でありたいと思っています。

 

 

株式会社サーティファイ

株式会社サーティファイは、ビジネス能力、技能に関する資格検定試験の開発、主催、実施と対応した試験問題集の開発、販売を行っております。DX化も進み、現在は2つのカメラによる不正監視を強化したオンラインテストシステム「スマート入試」や、問題集のデジタル化(デジタル問題集)も提供開始しました。

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