第2回新潟国際アニメーション映画祭。 29か国49本の応募からノミネートされた12作品を上映。 新潟市を世界に誇れる「アニメ都市」に育てたい。

2024.02.26 Mon

2023年3月に「新潟国際アニメーション映画祭」が開催され、世界からアニメ関係者やファンが集まり盛況のうちに幕を閉じました。そして第2回が3月15日から20日まで新潟市内中心部の7か所で開催されます。

第1回の反響や、第2回の見どころ、映画祭を通しての若手クリエーターの人材育成、今後の展望などについて、新潟国際アニメーション映画祭 映画祭実行委員会委員長 堀越謙三さん(開志専門職大学 アニメ・マンガ学部教授)に伺いました。

 

第1回を超える長編作品が、世界から新潟に集結。

― 昨年、第1回の映画祭を開催してどのような反響がありましたか?

堀越 予想以上の反響で、特に海外のジャーナリストには好評でした。その理由としては、上映時間が40分以上の長編アニメのコンペティション部門を持つのが当映画祭の特徴ですが、そのクオリティの高さが評価されたようです。また作品性を重視したアートアニメーションと、テレビアニメの劇場版といった商業アニメーションの両方を募集対象とした点も評価された点だと思います。

 

― コンペティションの審査委員長を務められた押井守監督にも注目が集まりましたね。

堀越 押井さんは世界中の映画関係者からリスペクトされている人ですからね。そのような知名度も実力もある方が審査委員長を務めたわけですから、出品する方のモチベーションも上がりますし、どのような作品が評価されるか注目されたと思いますね。今回はアイルランドでアニメーション製作に携わるノラ・トゥーミーさんが審査委員長を務めます。新しい視点での審査にご期待ください。

― 今回は第1回の応募数の2.5倍の長編アニメーションのエントリーがあったとお聞きしました。

堀越 前回を大きく上回る29か国・49作品のエントリーがありました。長編アニメーションは、世界で年間50本ほど製作されると言われていますから、そう考えるとほとんどの作品がこの映画祭に集まることになります。その作品の中には、南米など今まで観たことのない国々からの応募もあるので楽しみです。

 

― 応募作品が増えた理由は、この映画祭が世界で認知されたからでしょうか?

堀越 それもあるとは思いますが、作品自体が増える傾向にあると思います。長編アニメーションは実写版と比較して多くの製作費がかかる点がネックでした。しかし近年、動画配信会社が急成長し、潤沢な予算をかけるようになったことが一番の理由ではないでしょうか。そんな潮流を見越して当映画祭の準備を進めてきたので、出品数の増加を期待していました。今後は世界中の更にたくさんの国々から作品が応募される可能性がありますね。

 

次代のアニメ業界を担う人材の育成も、当映画祭の大きな役割。

― 長編部門の他にも、日本のアニメ界を牽引してきた監督の作品も注目だと思いますが。

堀越 はい。日本を代表するアニメーション監督の一人である高畑勲さんの“「映像」と「思考」を探る”をテーマに、長年積み上げた作品を多数上映します。また『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の上映し、あわせて監督の富野由悠季さんとメカニックデザイナー・出渕裕さんとのトークショーを行います。

 

― 次代を担う人材育成の一環として、「新潟アニメーションキャンプ」を開催されますね。

堀越 これはアニメーション製作を学ぶ若い監督・プロデューサー、学生たちを対象に実施する次世代育成プログラムです。前回は日本人を対象としたテストケースでしたが、今回は東南アジア在住者も対象としたため、700人ほどの応募がありました。東南アジア各国の国立の芸大生など、将来を期待される若者が参加の予定です。

―アニメーションキャンプは何を目的としているのでしょうか?

堀越世界で活躍する監督、スタッフ、批評家らのマスタークラスを連日受講できるという機会を設け、次世代のアニメ業界を担う人材を長期的な視点で育成しようとするものです。

 

― 開催地である新潟にも注目が集まりますね。

堀越 これからの時代、アジアがアニメマーケットの中心になる可能性があります。新潟で育った人材が、また新潟に戻り製作活動をしてもらえたら。そんなビジョンを描いています。日本人に限らず、アジアの才能を育てようという思いは、この映画祭の重要なテーマの一つです。

 

新潟で若手クリエイターの育成にも尽力したい。

― そもそも、新潟で国際的なアニメ映画祭を開催しようと考えた理由は?

堀越 新潟出身の大川博氏が日本初の本格的なアニメスタジオである東映動画スタジオ(現:東映アニメーション)を創設し、同じく新潟出身の蕗谷虹児氏が日本初のカラー長編アニメーション「白蛇伝」の監督を務めました。日本のアニメーションの原点となった2人を新潟が輩出したという歴史的背景もあり、この映画祭の開催に至ったわけです。

 

― 新潟市はアニメに関わる人材を育成する学園都市という側面がありますよね。

堀越 映画祭を立ち上げる以前から、新潟市はアニメに関わる人材育成の先導的役割を果たしてきました。現在も日本アニメ・マンガ専門学校と開志専門職大学でアニメ・マンガ業界を目指す学生が500名ほど学んでいます。また新潟大学にはアニメを研究する機関があります。このような教育機関が充実した都市は他にありません。

― さらに高度な教育の場をつくりたいというビジョンがあるそうですね。

堀越 この映画祭を通じて、アジア諸国から開志専門職大学に優秀な人材が集まってくることを期待しています。そして申請中の大学院を開設することができれば、先進のアニメ教育を学びながらMBA取得などビジネス面でも高度な教育の実践が可能です。そのように次代のメディア芸術を担うクリエイターを輩出したいと思っています。

 

新潟市を世界に誇れる「アニメ都市」にブランディングしたい。

― 新潟国際アニメーション映画祭の今後の展望をお聞かせください。

堀越 新潟市に年に一度くれば世界のアニメーションの新しい価値、トレンドを知ることができる。新潟国際アニメーション映画祭は、そんな出会いの場になればと考えています。また「新潟アニメーションキャンプ」に参加して、刺激に満ちた日々を送ったアニメクリエーターの卵たちが10年ほど経ち、監督となって自らの作品をコンペティションに出品してくれたらこんなに嬉しいことはないですね。そして毎年、参加者の作品が並ぶことを夢見ています。そんな若手監督が応募したくなる憧れの映画祭に育てていきたいですね。

― 最後にアニメを通した新潟市のまちづくりに関してイメージされていることはありますか。

堀越日本には個人や製作会社の作品を収蔵する美術館はありますが、アニメ専用の美術館はありません。専門学校や大学などの教育機関があり、映画祭に加えて美術館もあったら、世界でNo.1のアニメ都市と胸を張って言えるとのではないでしょうか。そのようなアニメを通した「新潟のブランディング」を実現させたいですね。

 

新潟国際アニメーション映画祭

新潟国際アニメ映画祭は、開志専門職大学のキャンパスを含む新潟市内7か所が主な会場。6日間の期間中に、最大49作品の長編アニメーション作品が上映されるほか、シンポジウムなど祭典を盛り上げる多くのイベントが企画されています。

会期:2024年3月15日(金)~20日(水・祝) 毎年開催
新潟国際アニメーション映画祭 (niigata-iaff.net)

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