学生のデザイン力で地域貢献、行政機関や企業との連携プロジェクト。

2024.06.06 Thu

新潟デザイン専門学校は、長年にわたり地域の行政機関や企業の行うプロジェクトにデザイン制作により協力し、参加させていただいています。この4月からキャンペーンをスタートした新潟県警察本部の「新潟県ヘルメット着用向上委員会プロジェクト」にも参加しており、オリジナルキャラクターによるポスターが話題を呼んでいます。

これまでどのような意図で連携プロジェクトに関わってきたか、学生の学びにおいてどのような効果があったか、今後予定しているプロジェクトなどについて新潟デザイン専門学校 教務部長 宝福大志さんと、教務部 本望典子さんに話を伺いました。

地域貢献と実践経験の場として連携プロジェクトを推進。

― どのような経緯で地域の行政機関や企業のプロジェクトに参加するようになったのですか。

宝福 本校は1976年の開校からもうすぐ50年を迎えますが、これまで多くの人財をデザイン業界に輩出してきました。そのOB・OGが多方面で活躍しているので、行政機関や企業から連携の話をいただくようになりました。そして、制作したデザインがメディアを通じて報道され、また新たな依頼をいただく。このように連携プロジェクトが広がっていきました。

 

― 行政機関や企業とのプロジェクトに学生たちが参加することの意義は。

宝福 学生たちは産学官連携を通して、社会に出た後の仕事の流れを経験できますし、ポスターやグッズなどといった成果物になることで達成感を得ることができます。また、これらの取り組みは地域貢献にも繋がります。産学官連携については、当校としても今まで積極的に取り組んできました。昨年は21の法人・団体との連携プロジェクトを実施しました。

 

― どのような流れでプロジェクトを進めているのですか。

本望 新潟県察本部様との薬物乱用防止を呼びかける「No DRUG」企画は、今年で13回目となるプロジェクトです。それを例にお話させていただくと、まず県警の方から依頼内容の詳細や制作物などについてのオリエンテーションを行ってもらいます。これは学生にとって大切な情報収集の場となるため、質疑応答の時間をしっかりと設けています。

 

― その後、学内でどのような過程を経て提案しているのですか。

本望 学生のデザイン案を担当教員がチェックして、依頼主のニーズに近づけるよう指導し、学生が修正を加えて、クオリティの高いものに仕上げていきます。その後、プレゼンテーションの場を設けて、デザインイメージや作品に込めた想いなどの制作意図を依頼主に説明します。そして修正依頼を受けてブラッシュアップしていく。このように社会に出た後の仕事と同じ流れを経験して、依頼主に納品し、社会に発信されていきます。

― 学生にとっては、とてもやりがいのあるプロジェクトでしょうね。

宝福 そうですね。先輩たちが手がけたデザインを入学前のオープンキャンパスで見て、それに憧れて入学を決めた人もいるほどです。そのため、入学してこのプロジェクトに参加する際は高いモチベーションで取り組んでくれています。また保護者の方からも、このような実践的な学びを評価していただき、進路選択の際にもお子さまの夢を後押しする要素にしていただけていると感じています。

 

学科を超えたコラボで、話題のキャンペーンを展開中。

― 今年度から「新潟県ヘルメット着用向上委員会プロジェクト」という新しい企画が始まりましたね。

宝福 はい。新潟県警察本部様に「No DRUG」のプロジェクトを長年にわたって評価していただいた結果、この度の依頼につながりました。新潟県警察本部様からは「キャラクターを使って若者にアピールしたい」との要望をいただきましたので、キャラクターイラストデザイン科で制作を請け負うことになりました。そして学生から多くの案を提出してもらい、その中から選ばれたのが、この6人のキャラクターです。それぞれ異なる学生が制作を手掛けました。その後、ポスター全体のデザインやロゴマークは、グラフィックデザイン科の学生が担当しました。このように学科の強みを活かしたコラボレーションも新潟デザイン専門学校ならではだと思います。

― 学生も街で自分たちが制作したポスターを見かけるとうれしいのではないですか。

本望 その通りです。思わず友達や家族に、「これ自分が作ったんだよ」と言って自慢したくなるそうです。それと同時に、自分の学んだことで「社会貢献できている」という実感があると話していました。このポスターがきっかけとなり、キャラクターを活用した新しい取り組みの依頼があることを期待しています。

 

― 連携プロジェクトを通じて、どのような点で学生の成長を実感しますか。

本望 自分のイメージのみでデザインするのではなく、まずはその活動や商品の背景や世の中の流れなどを調べることで、様々な視点に立ってデザインするといった、仕事をする上での基本が身についたと思います。

宝福 また、締切りから逆算してスケジュールを立て、計画的にデザイン制作するスキルも在学中から身に付けることができたと感じています。例えば、依頼主への提案まで残り1か月だったとしたら、「いつまでにリサーチして、これくらいの期間でデザインして、最後の仕上げには何日必要で…」など、とスケジュールを立てます。その中でベストなものを提案できるよう、学生たちは仕上がりまでこだわって制作を行います。仕事を意識した実践力もプロジェクトに携わることで習得できていると思います。

災害の記憶と教訓を後世に伝える“絵本づくり”に初挑戦。

― これから予定している連携プロジェクトはありますか。

宝福 新潟県村上市の小岩内集落で令和4年に発生した災害の記憶と教訓を後世に伝える絵本の制作に入っています。今年の1月に村上市様と協定を締結して、本格的なプロジェクトは4月からスタートしました。まずは市役所および小岩内集落の消防団の方々と絵本制作に関する打合せを行い、5月下旬には学生と一緒に現地に出向いて災害現場の写真撮影を行い、関係者から話を聞いてきました。9月の完成を目指して学生は頑張っています。

 

― どのような絵本の内容にしていく予定ですか。

宝福 絵本の舞台となる小岩内集落では甚大な被害がありましたが、1人の人命も失うことはありませんでした。そのため学生たちは暗いイメージではなく、「温かい雰囲気のイラストのタッチや色使いにすることで、小さいこどもからお年寄りまで、読みたくなる本にしよう」と話し合っています。先日、小岩内集落に取材にお邪魔したのですが、集落のみなさんも絵本の完成を本当に楽しみにしていたので、学生たちも一段と力が入ったようです。

 

就活のチカラにもなる地域連携を近県にも広げたい。

― このような連携プロジェクトは、学生の就職活動にも良い影響を与えているのではないでしょうか。

宝福 プロジェクトの中に、デザインに込めた学生の想いなどを依頼主にプレゼンテーションする場を設けています。これによって“伝えるチカラ”が鍛えられているので、就職試験の面接の際にも生かされています。もちろんそのチカラは就職後にも不可欠ですからね。

 

― 今後の課題や展望があれば教えてください。

本望 今は学生と同年代の若者向けのプロジェクトが多いのですが、今後は子どもやお年寄りなどの世代をターゲットにしたものも手がけられたらと考えています。そうすれば、自分たちと世代が異なるため、新たにリサーチしなければいけない点が出てきて、 “アイデアの引き出しが増える”ことが期待できます。

宝福 先ほど紹介した絵本をはじめ、これまで新潟県内各地の行政・企業と連携プロジェクトを進めてきましたが、これからは近県へも取組みのエリアを広げたいと考えています。本校には長野、富山、山形、福島など隣県からの入学者も多数在籍しており、遠方ですと沖縄県や北海道からの入学者もいます。デザインを通して新潟はもちろん、全国で新潟デザイン専門学校のデザイン力をアピールし、全国から選ばれる学校を目指してこれからも学生指導に力を入れていきたいと思います。

新潟デザイン専門学校

創立49年の新潟にあるデザインの専門学校。デジタルデザイン、グラフィックデザイン、イラストレーション、キャラクターデザイン、写真、美術、造形、雑貨・ジュエリーなど総合的にデザインを学び、企業連携プロジェクトでの商品開発やコンペティションなど実践的な授業を展開。卒業後の即戦力を目指す。

〒950-0932 新潟市中央区長潟2-1-4
TEL:025-287-3383(平日9:00~17:30) FAX:025-287-3375
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