シンガポールから世界へ サッカーを通じて人材育成を
Albirex Singapore Pte.Ltd. / 難波 修二郎

2021.09.21 Tue
PROFILE
難波 修二郎
Albirex Singapore Pte.Ltd. CEO
香川県出身。大阪体育大学大学院でスポーツ経営学を学び、2000年にFC東京へ入社。2009年に退職し渡米。Canisius College Graduate Schoolでスポーツ経営学を学び、現地でスポーツマネジメント会社を共同創業し、副社長を務める。2014年、シンガポールプレミアリーグ(旧Sリーグ)に所属するアルビレックス新潟シンガポールの経営を行うAlbirex Singapore Pte.Ltd.に入社し、2020年よりCEOに就任。シンガポール在住。
大学進学を考えていた頃、Jリーグが発足。
スポーツビジネスの可能性を感じ、スポーツ経営学を学ぶ。
10年間Jリーグ所属クラブに勤め、多くの経験を積む。
さらなる知識を修得するためアメリカの大学院に進学。
卒業後、アメリカでスポーツマネジメント会社を起業し、日本とアメリカの橋渡しを。
それまでの経験を買われシンガポールのプロサッカークラブへ。
現在、CEOとしてクラブの発展・拡大を図っている。
そんな難波さんが見据える将来のビジョンとは

サッカーを通して国際的に活躍できる人材を育成

現在、難波さんはどのようなお仕事を?

2020年にAlbirex Singapore Pte.Ltd のCEOになり、会社の経営全般を見るのはもちろんですが、スポンサー関連の営業等の渉外活動は私が一手に行っています。そのほか人事やチームのプロモーション、マーケティング、WebサイトやSNSの発信、新規事業の開発も行っています。

チームの特徴を教えていただけませんか?

アルビレックス新潟シンガポールはシンガポールのリーグに所属しているサッカークラブで、日本人選手を主体としたチームです。学生時代に活躍したけれど日本でプロになれなかった選手などが、経験を積んでステップアップしたいという目標を持って入団してくるケースが多いと思います。ここで結果を出せば、Jリーグから声が掛かる事もありますし、シンガポールのローカルチームやアジアの他の国でプロとして羽ばたいていくこともできる。そのような選手のためのプラットフォームとなっています。

サッカーを通して、人を育てるという意識も持っているのですか?

プロサッカーチームですので、チームとしての目標はシンガポールプレミアリーグでの優勝ですが、世界で堂々と戦える若い日本人を輩出することも大切なミッションです。だから判断に迷った時は、「これで人が育つかな。育つ環境を提供できているかな」という考え方に照らして自問自答しますね。

プロサッカーチームの運営の他にはどのような事業を?

サッカースクールとチアダンススクールです。受講者は日本人の駐在員のお子さんなどが多いのですが、中にはローカルのシンガポーリアンや、シンガポールで働いているアメリカ人やイギリス人のお子さんもいます。
また、スペインのバルセロナへの留学事業も手掛けています。日本人・スペイン人混成のアルビレックス新潟バルセロナというクラブで現地の地域リーグ(カタルーニャ州リーグ4部)に参戦するとともに、同時に語学研修を受講できるプログラムになっています。サッカーをすることがメインではなく、スペイン語やスポーツビジネスのカリキュラムを受講してもらい、国際的に活躍できる人材を育てるのが目的です。

日米の大学院でスポーツ経営学を修得

もともとスポーツビジネスに興味があったのですか?

大学進学を考えていた頃、ちょうどJリーグが発足して、スポーツマーケティングという分野が注目を浴びるようになりました。将来はスポーツ業界で働きたいと思うようになり、スポーツ経営学の第一人者の教授がいらっしゃる大阪体育大学に進学。その後、大学院に進み、修了後はスポーツビジネスの最前線であるJリーグのクラブに入社しました。

サッカースクール、地域担当、営業と、いろんな部署と関わりながら様々な事にチャレンジさせてもらいました。在籍した10年間でプロサッカークラブを隅々まで経験できたことは、今考えると大きな財産だと思います。

その後、なぜアメリカに留学したのですか?

日本の大学院でスポーツ経営学を学びましたが、日本では論文に重点を置いたアカデミックな要素が強かったんです。その点アメリカは実務寄りで、より仕事に直結した知識も得られると思いました。そこで学びながら現地のスポーツマーケティング会社で働き、その後はフロリダ州に転居して会社を設立。アメフトのプロを目指す日本人を現地のプロチームにコーディネートしたり、日本でスポーツビジネスを学んでいる大学生を連れて現地の施設や大学訪問のアテンドなどをしていました。

NSGグループに入ったきっかけを教えてください

当社の前社長の是永大輔と元々の知り合いでした。私がアメリカの仕事を辞め、帰国して東京にいるときに、ちょうど是永もシンガポールから東京に出張にきていて、「いっしょに働かないか」と声を掛けられました。実はまたアメリカに戻って仕事をしようか悩んでいたのですが、これから成長の可能性があるアジアも良いなと思い決断しました。

入社してどんな仕事を担当?

主にチームのスポンサー営業を行う、セールスマネージャーでしたが、幅広い業務を行っていました。Jリーグの経験があるので集客イベントを手掛けることもありました。サッカースクールの若いコーチにビジネスの観点を身に着けてもらうよう指導することもありました。

シンガポールを拠点に人材育成の輪を広げたい

ビジネスを取り巻く環境に変化はありましたか?

シンガポールが国としてここまで成長するには、日本をはじめとする海外の技術や経験が必要でした。だから国として積極的に海外からの企業進出を優遇してきました。しかしこの過程が一段落したため、今後は「シンガポール企業の発展」に軸足を移した政策に変わりつつあります。

クラブ経営をシフトチェンジするタイミングなのでしょうか?

その通りです。サッカースクールやチアスクールの生徒たちは日本人がほとんどなので、今と同じことを続けていても多分これ以上生徒は増えない。このまま日本人を相手にビジネスを展開していると成長は望めません。そこで一昨年からローカル化を推進していて、スタッフの現地人材の比率を高めています。これはNSGグループの理念にある「国際社会の発展に寄与する」という部分とも合致すると思っています。

今後こういう展開をしていきたいという構想はありますか?

シンガポールは子どもの育成を重視しているので、我々がその役に立てればより一層クラブの存在意義が明確になります。10年後に「アルビレックス新潟シンガポールってどんな会社」と言われたら、「サッカーもする人材育成会社」と答えられたらいいですね。またビジネスエリアは離れていますが、NSGグループの一員ですので、各学校などとの連携による新たな価値創造も、少しずつではありますが考えています。

例えば、どのような連携を考えていますか?

シンガポールは自然が少ないので、子ども達はアウトドアでキャンプをする経験がないんですよ。だからキャンプファイヤーを囲んで仲間と星を見ながら語り合ったり、自然の中で協力し合って何かを作ったりする経験をさせてあげたい。人間形成に大きな影響を与えていくと思います。NSGグループの専門学校等と連携して、シンガポールの子ども達を是非日本に連れていってあげたいですね。

これから挑戦したいことは?

人材育成という観点からも、世界中に拠点を作り、その土地、その土地で人を育てたいと思っています。まずは東南アジア諸国を考えています。点と点が繋がって、それが面になっていくのが理想。いつの日か小学生のアルビレックスシンガポールとアルビレックスミャンマーやアルビレックスタイランドがサッカーの親善試合をできれば良いですね。またみんなで日本に行ってアルビレックス新潟と試合をして、その夜はキャンプファイヤーをする…そんなことを夢見ています。

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