大学の研究施設が子どもの学びの場に。実験から広がる理科と健康への関心

2026.09.17 Thu

  新潟医療福祉大学では、子どもたちを研究の現場に招き、顕微鏡による観察や医療の検査に関わる実験を体験する教室を定期的に開催しています。5歳から小学6年生を対象にした「わくわくサイエンススクール」と小学5・6年生を対象にした「ひらめき☆ときめきサイエンス」を実施しています。教室を始めた理由や、理科と自分の体に興味を持ってもらうための工夫を、臨床技術学科の中川教授に伺いました。

インタビューを受ける中川教授

 

理科と自分の体に興味を持つきっかけをつくる

実験教室を始めた理由を教えてください。

中川: 子どもたちの理科離れが課題になる中、実験や観察を通して、理科の面白さを実感できる機会を増やしたいと考えたことがきっかけです。顕微鏡を使った観察では、自分で操作し、気になったものを納得するまで見ることで、より深い興味につながります。

この実験教室では、大学の設備を生かして子ども一人につき一台の顕微鏡を用意し、それぞれのペースでじっくり観察してもらいます。「もっと見たい」「自分でも調べたい」という気持ちを引き出し、理科への関心を広げることを大切にしています。

 

理科の実験と合わせて、体の仕組みや健康をテーマにしているのは、なぜですか。

中川: 子どもの生活習慣病や肥満傾向は、食生活の欧米化や生活リズムの乱れなどを背景に、近年課題として指摘されています。
多くの小学校では5年生頃から人体について学び始めますが、低学年のうちから楽しみながら体の仕組みを知る機会をつくりたいと考えました。食事や運動、薬の飲み方が体とどのように関係しているのかを、実験を通して考えてもらうのです。
例えば、薬とさまざまな飲み物を混ぜ、反応の違いを観察する実験があります。実際に色が変わる様子を見ると、薬を水で飲むと意味を実感しやすくなります。
一度の実験教室だけで生活習慣が変わるとは言い切れませんが、自分の体を知ることが、将来の生活習慣病予防を考える入口になってくれたらと思っています。
 わくわくサイエンススクールの様子

 

一瞬の変化と自分で試す経験が、子どもの心を動かす

子どもたちが楽しめるよう、実験内容にどんな工夫をしていますか。

中川: 子どもたちの目の前で、一瞬で色や形が変わるものを選ぶようにしています。変化がはっきり見えると、「どうしてこうなったのだろう」という疑問が自然に生まれるからです。

血液型を調べる実験や、血液の痕跡を光らせる反応、医療分野の専門性を子ども向けに組み立て直しています。また、子どもたちは探偵ものや謎解きが好きです。検査も、血液などを手掛かりに体の中の異常を見つける仕事です。そのため、「ケーキを食べたのは誰か」といった物語のあるテーマにすると、楽しみながら検査の考え方に触れてもらえます。

専門的な内容を、子どもに分かりやすく伝えるための工夫を教えてください。

中川: 子どもたちが知っている言葉で説明することは大前提としてですが、例えば「凝集」という専門用語は、最初に「塊ができること」と伝えます。小学5、6年生には、「このように塊ができることを凝集と言うんだよ」と説明し、身近な言葉と専門用語を結び付けています。
実験ノートも年齢に合わせて作成し、漢字にはふりがなを付けています。予想や結果を書き込めるほか、実験で生まれた疑問の答えも読み返せるようにし、夏休みの自由研究などにも活用できる内容にしています。
大切にしているのは、答えを覚えることではなく、自分で予想し、試し、結果を見て考えることです。実験を通して、その過程を体験してもらいたいと思っています。

実験教室に参加した後、子どもたちにどのような変化が見られましたか。

中川: それまであまり興味を示さなかった子が、体験後に図鑑を開き、人体について、自分から調べるようになった子がいました。わずか数時間の体験をきっかけに、学ぶことへの姿勢が変わったと聞き、嬉しかったです。

また、「大きくなったら、この大学に来て看護師になりたい」と話してくれた子もいました。理科への関心だけでなく、大学や将来の進路を身近に感じる機会にもなっているのだと思います。
実験教室で学んだ糖尿病や体の仕組みについて、帰宅後に両親・祖父母へ話してくれる子もいます。当初は子どもたちだけを対象に始めた活動でしたが、子どもを通じて、健康に関する知識や関心が家族にも広がっていくことに気づきました。

わくわくサイエンススクールの様子

学生が支える、子どもたちの実験体験

臨床技術学科の学生は、どのような役を担っていますか。

中川: 学生には、主に実験教室のアシスタントをお願いしています。私が全体へ説明した後、学生が各テーブルに入り、器具の使い方を伝えたり、一緒に手順を確認したりします。子ども向けの教室では、自分で周囲を見ながら動かなければ時間内に終わりません。子供たちのふれあいだけではなく、イベント自体の運営も考えながら主体的に動いてくれるようになっていってもらっています。

実験教室を重ねる中で、学生の関わり方に変化はありましたか。

中川:経験を重ねると、「次はこれを準備します」「こうした方が分かりやすいのではないでしょうか」と、自分から動いたり提案したりする学生も出てきます。私よりも子どもに分かりやすく説明してくれる学生もいます。
卒業後に病院へ就職した場合も、患者さんへの説明や、地域の子どもを対象にした催しに関わる可能性があります。相手に合わせて専門的な内容を伝える経験は、将来のさまざまな場面で生かせると思います。

インタビューを受ける中川教授

 

実験教室で生まれた興味を、子どもから家族、地域へ

Q.今後「わくわくサイエンススクール」での体験を、をどのように広げていきたいですか。

中川:これからも、実験教室という形を続けながら、大学へ足を運ぶことが難しい子どもにも理科の面白さを届ける方法を考えていきたいです。
そのため、オンラインでゲームのように楽しみながら学べる教材をつくりたいと考えています。例えば、食べたものが体のどこを通り、どのように変化するのかを、画面上で追える教材です。オンラインであれば、住んでいる地域にかかわらず体験してもらえます。
また、薬や検査、生活習慣は、大人にとっても身近なテーマです。将来的には、大人を対象にした講演会にも取り組み、子どもからその家族へ、さらに地域へと、体や健康について考える機会を広げていければと思います。

 

 

新潟医療福祉大学

全国でも数少ない、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部16学科の医療系総合大学です。そのメリットを最大限に活かし、本学では、医療の現場で必要とされている「チーム医療」を実践的に学ぶことができます。また、全学を挙げて組織的な資格取得支援体制と就職支援体制を構築し、全国トップクラスの国家試験合格率や高い就職実績を誇っています。さらに、スポーツ系学科を有する本学ならではの環境を活かし、「スポーツ」×「医療」「リハビリ」「栄養」など、スポーツと融合した学びを展開しています。

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