大学生が支える、中学部活動の地域展開

2026.07.02 Thu

中学校の部活動を地域へ移行する動きが全国で進んでいます。新潟医療福祉大学では、新潟市北区の総合型地域スポーツクラブ「ハピスカとよさか」と連携し、中学生向けの「放課後スポーツタイム」を2025年10月にスタートしました。最大の特徴は、大学生が指導者として参加していること。スポーツを楽しむ場をつくりながら、中学生と大学生がともに成長する取り組みです。

副学長の西原康行さん、法人スポーツ推進室長の南俊之さん、学生指導者の阿達巧笑さん(心理健康学科2年)に、取り組みの背景や手応えについて話を聞きました。

担当者たち

「スポーツの空白地帯」をなくす放課後スポーツタイム

― 「放課後スポーツタイム」を始めたきっかけを教えてください。

西原 全国的に中学校の部活動を地域へ移行する流れが進んでいます。本学では「まず大学のある地域から取り組もう」と考え、新潟市北区で活動をスタートしました。大学生が地域の中学生と関わりながら指導経験を積み、その経験が将来につながる仕組みをつくれないかと考えたことが出発点です。地域に根差した「ハピスカとよさか」と連携できたことも大きな後押しになりました。

― 南さんは、どのような問題意識からこの企画を形にしていったのでしょうか。

 部活動の地域展開というと、既存の部活動を地域クラブへ移すイメージが強いと思います。しかし議論を進める中で見えてきたのは、その枠組みに入らない子どもたちの存在でした。全国的には、中学生の4割以上が部活動や地域クラブに継続的に参加していないと言われています。競技スポーツには興味がないけれど体を動かしたい子どもたちも少なくありません。そこで私たちは勝敗や技術向上を目的とするのではなく、「まずスポーツを楽しむ場」をつくろうと考えました。

活動ではソフトバレーボールやボッチャなどのニュースポーツを中心に、毎回さまざまな種目を体験できるようにしています。運動が得意な子も苦手な子も、一緒に楽しめる居場所づくりを大切にしています。

― 活動はいつ頃からスタートしたのでしょうか。

 2025年夏から準備を始め、学生指導者向けのコーチング研修や安全管理研修などを実施した後、同年10月から北区内の中学校3校をモデル校として活動を開始しました。現在は月2回のペースで実施しています。学校施設を活用しているため、授業終了後そのまま参加でき、保護者の送迎も必要ありません。そうした参加しやすさもあり、口コミで少しずつ参加者が増えています。

スポーツタイムについて話す南さん

 

子どもを支えるなかで、学生指導者も成長する

― この活動を通じて、中学生にどのような力を身につけてほしいと考えていますか。

西原 体力づくりも大切ですが、それ以上に「スポーツを楽しむ経験」を持ってほしいと思っています。中学時代に自分の意志で選び、「楽しい」と感じた経験は、大人になってからの生活の質にもつながります。また、活動を通じてコミュニケーション能力や協調性も育まれていく。そうした成長の場になってほしいですね。

― 学生が指導者として関わることで、どのような教育効果を感じていますか。

西原 本学の学生は、将来、医療・福祉・教育・スポーツなど人を支える仕事を目指しています。その意味で、この活動はまさに実践の場です。
中学生一人ひとりの気持ちを理解し、どう声を掛ければ参加しやすくなるかを考える。こうした経験は教室だけでは学べません。教育実習とは異なり、1年生から継続的に現場を経験できることも大きな価値だと感じています。

― 活動を通じて、特に印象に残っているエピソードはありますか。

 当初は地域クラブ側が中心となって運営していましたが、活動を重ねるうちに学生から「こうすればもっと楽しめる」「次はこんな種目をやりたい」という提案が出るようになりました。
今では学生自身がプログラムを考え、話し合いながら運営しています。学生の主体性が育っていることを実感しています。
一方で、学校によって参加人数に差があるなど課題もあります。しかし、それも含めて新しい挑戦です。地域に根付く活動として、少しずつ定着させていきたいと考えています。

阿達くん

 

「一緒に楽しむ」からこそ学べることがある

 阿達さんが放課後スポーツタイムに参加しようと思った理由を教えてください。

阿達 将来はカウンセラーなど、人を支える仕事に就きたいと思っています。そのため子どもたちと関わる経験を積みたいと考えていました。
この活動はスポーツを通じて自然にコミュニケーションが取れるところに魅力を感じ、募集を見てすぐに応募しました。

実際に中学生を指導してみて、難しかったことはありますか。 

阿達 一番難しいのは、みんなが楽しめる環境をつくることです。子どもたちの経験や運動能力はさまざまで、全員が楽しめる環境づくりには工夫が必要です。
活動前には学生スタッフ同士で集まり、「どう伝えれば分かりやすいか」「どんな声掛けが良いか」を話し合っています。その時間も大切な学びになっています。

逆に、やりがいやうれしかった瞬間はありましたか。

阿達 最初は中学生同士で固まっていて、私たちとも距離がありました。でも活動を続けるうちに、「一緒にやろう」と声を掛けてくれたり、気軽に話しかけてくれたりするようになりました。
「今日楽しかった。また来るね」と言ってもらえた時は本当にうれしかったですね。学年を越えて交流する姿を見ると、自分たちが少しでも居場所づくりに貢献できているのかなと感じます。

この活動を通じて成長したこと、そして将来の夢につながっていることを教えてください。

阿達 以前は自分から話しかけることが苦手でしたが、今では積極的に声を掛けられるようになりました。
同じ声掛けでも反応は人それぞれなので、一人ひとりに合わせた関わり方も学んでいます。教科書だけでは学べない経験です。

 

西原副学長

 

スポーツを通じて、人も地域も育っていく

この活動には、スポーツ以外の効果もありそうですね。

西原 今の子どもたちは、家庭や学校以外の大人と接する機会が少なくなっています。参加した中学生からも「大学生と話せるのが楽しい」という声が聞かれます。
そして成長するのは子どもたちだけではありません。大学生も育ち、地域の大人も育つ。地域全体が関わり合いながら成長していくことこそ、この取り組みの大きな価値だと思っています。

今後、この取り組みをどのように発展させていきたいですか。

 まず大切なのは、持続可能な仕組みをつくることです。現在は、本学の学生や卒業生を地域の学校やクラブとつなぐ「指導者バンク」の構想を進めています。地域では指導者不足が課題となっており、大学にも人材派遣に関する相談が寄せられています。そうしたニーズと学生を結び付けることで、地域にとっても学生にとっても価値のある仕組みになるはずです。将来的には、新潟市北区での取り組みをモデルとして、県内各地へと広げていきたいと考えています。

― 最後に、この取り組みの未来についてお聞かせください。

西原 私たちはこの活動を単なる部活動の地域展開とは考えていません。大学生が地域と関わり、子どもたちを支える。その経験が学生自身の成長につながり、地域への愛着も育まれていく。そうした循環を生み出すことが、この取り組みの大きな価値だと思っています。
「部活動の地域展開」にとどまらず、大学生と地域が関わり合う新しい形として、今後の広がりが期待されます。

 

新潟医療福祉大学

全国でも数少ない、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部16学科の医療系総合大学です。そのメリットを最大限に活かし、本学では、医療の現場で必要とされている「チーム医療」を実践的に学ぶことができます。また、全学を挙げて組織的な資格取得支援体制と就職支援体制を構築し、全国トップクラスの国家試験合格率や高い就職実績を誇っています。さらに、スポーツ系学科を有する本学ならではの環境を活かし、「スポーツ」×「医療」「リハビリ」「栄養」など、スポーツと融合した学びを展開しています。

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