未就学児の眼育(めいく)の活動を学生の実践の場に。 眼の健康づくりの大切さを全国に発信する。

2023.05.12 Fri

近年、子どもの視力の低下が問題になっています。新潟医療福祉大学 社会連携推進センター長 石井雅子教授は、2014年から新潟市の幼児期の視力検査体制の強化を始め、2019年からは福井県鯖江市と連携し、眼の健康づくり「眼育(めいく)さばえプロジェクト」を推進するなど、新潟県内外で子どもの眼の健康指導を展開しています。

どのような活動を行ってきたか、またその成果や今後取り組みたいことなどを、新潟医療福祉大学 石井雅子教授に伺いました。

 

地方自治体と連携し、幼児期の眼の健康促進に取り組む。

― 福井県鯖江市での「眼育(めいく)さばえプロジェクト」に関わるようになった経緯を教えてください。

石井 2014年から新潟市の認可保育所が毎年行なっている視力検査の介入研究に取り組みはじめました。内容は検査の指導や眼の健康に関する啓発ですが、全国的にも珍しい活動だったため、WEBなどで取り上げられました。その取り組みを知った鯖江市から、「眼の健康をシティプロモーションにしたいので手伝ってほしい」という相談の連絡をいただいたのがきっかけです。

 

― 今までどのような活動をされてきたのですか?

石井 2018年から幼児期の子どもたちの視力検査体制の強化や眼の健康づくりを推進してきました。また、眼を大切にする講習をするため、視能訓練士を目指す学生が紙芝居を作り、それを持って鯖江市内の保育園を訪れて読み聞かせを行いました。その中の一人が活動内容を卒業論文にまとめたのですが、「保育と保健」という専門誌に紹介されました。また、「眼育活動」はSDGs促進活動の一環でもあり、2019年には国連永久大使が視察に来られました。その際も視機能科学科の学生3名が参加しており、いっしょに活動された大使から、とても感心を寄せていただきました。

― 2021年には鯖江市と新潟医療福祉大学が連携協定を結んだそうですね。

石井 はい。眼育事業を契機に保健、医療、福祉、スポーツ、産業などの分野で相互に協力し、地域社会への貢献や人材育成、産業振興に寄与していくため、2021年に包括連携協定を締結しました。この春にはこの活動に積極的に参加した学生が、視能訓練士として福井大学医学部付属病院に就職しました。就学前健診のサポートを福井大学と連携して行ってきたので、その時の活動も評価いただいたのではないでしょうか。眼育活動での経験が学生の成長につながっていると実感でき嬉しかったですね。

 

学生が絵本や紙芝居を作り、保育園で講習会を開催。

― 新潟県内ではどのような活動を行ってきたのですか?

石井 ゼミの学生と共にオリジナルの絵本を作り、保育園に出向いて読み聞かせを行いました。どのようなストーリだと子どもが理解しやすいかを、いろんな絵本を見て研究し、半年ほどかけて1冊作り、その後も2冊作りました。眼の健康の大切さや近視の予防法などを分かりやすく伝えるのが目的です。巻末には「なぜ視力検査が大事か」「遠視、近視とは何か」「子どもの眼鏡の大切さ」など、幼児保育に関わる方に知ってほしい情報も掲載しました。

 

― 紙芝居も作られたようですが、どのように使われたか教えてください。

石井 「長い時間スマホを使うとダメだよ」ということを伝える紙芝居を作ったのですが、コロナ禍では園の関係者ではない私たちは保育園に行きたくても行けなかったので、オンラインでつないで講習会を行いました。また眼をテーマにしたゲームも作りました。眼の表情で喜怒哀楽がわかります。それを理解してもらうために、学生が大きな猫のパネルを作って、子どもたちに「これはどいいう時のおめめ?」と遊びながら、眼は表情を作る大切な役割があることを教えました。このパネルはゼミの学生とその友人である24名が関わり、全部で4つ作りました。子どもたちには楽しみながら、いろいろな角度から眼のことを考えてもらいたいですね。

 

― 眼育の活動の際、大切にしていることはなんですか?

石井 現場に学生を連れていくことです。新潟市内はもちろん、鯖江市にも可能な限り同行してもらいました。現場でしか学べないことがあるからです。例えば地方自治体の活動に参加することで、養護教諭や市職員の方など、社会に出た際に連携する職種の方との関わりの中で将来の仕事の実体験ができます。大学では座学で知識を学び、課外活動では実践力を身につけて、社会へ羽ばたいてもらいたいですね。

 

眼育を新潟から全国に広げ、健康寿命の延伸に貢献したい。

― 活動の成果は数字となってあらわれているそうですね。

石井 新潟市の認可保育園の視覚健診で、で再受診を勧められた子どもが、きちんと眼科に行って治療を受けたかどうかを調べたところ、以前は未受診率が40%もあったのですが、今は20%台に。2014年から取り組んできた眼育の活動がそうした成果が上がった理由の一つだと評価されています。またこれまでの活動により、保育士の皆さんから視力検査の重要性を認識していただき、視力検査の講習会を開いてほしいという要望がありました。延べにして300名ほどの保育士の方々が講習会に参加しました。

 

― この活動は全国的に反響が広がっているようですね。

石井 新潟県内で言えば、弥彦村、燕市、魚沼市などでも眼育の活動が広がっており、3歳児視覚健診に視能訓練士を登用してプログラムを組んで実施しています。また沖永良部島の養護教諭の方からオンライン研修の依頼があったり、幼稚園から講演依頼を頂いたりしました。さらには新聞やWEBで活動を知った保護者の方から、保育園で「スマートフォンやタブレットの長時間使用が子どもの眼に与える影響」の講演をしてほしいと依頼を受けることもありました。眼の健康に関する意識が高くなっていることを実感しています。

― 今後の活動はどのように計画していますか?

石井 今は就学前の眼育がメインになっていますが、これからは中・高校生に広げていきたいですね。眼は脳をはじめ全身と関わる大切な器官です。また視覚情報はスポーツ運動能力の向上や全身の健康につながります。育ち盛りの年代にそのメッセージを発信したい。さらに眼は健康寿命・幸福寿命を延伸させるためにも重要なので、視機能科学科だけではなく、本学のいろいろな学科が眼育に関わるようになっていけばと思います。そして眼育に関わった学生が、卒業後にこの活動の経験を活かして社会に貢献してもらえたら嬉しいですね。

 

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本学では「優れたQOLサポーターの育成」を基本理念とし、対象者のQOL向上に向けた支援を考え、実践することのできる人材を育成するために、様々な取り組みを行っています。本学の学びを通じて、「看護」「医療」「リハビリ」「栄養」「スポーツ」「福祉」など幅広いフィールドで一人ひとりの「良く生きる」を支えるスペシャリストを育成します。

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