福島の復興を志し、Iターン。スポーツを通じて地域を健やかで元気に。
一般社団法人 福島スポーツアカデミー / 加藤 大樹

2023.08.08 Tue
PROFILE
加藤 大樹
一般社団法人 福島スポーツアカデミー 代表理事
1982年秋田県生まれ。仙台の大学を卒業後、金融機関に就職し営業や企画などの業務に携わる。2013年にNSGグループに入社。FSGカレッジリーグスポーツ事業室に配属。福島スポーツアカデミー代表に就任し、バスケットボール教室を立ち上げ、その後、チアダンススクール、マルチスポーツスクールと事業を拡大。2023年6月には自社スタジオを設立し、ダンススクールを開校。福島の地で仕事も私生活も充実した日々を送っている。
仙台の大学を卒業後、新卒で金融機関に就職。営業や企画などでキャリアを積む。
29歳の時に東日本大震災が発生し、自分が育った東北のために働きたい。
そんな思いでIターンを決意し、30歳でNSGグループに入社。
福島で子ども向けのスポーツ事業を立ち上げる。
時代や地域のニーズに合わせスクールの規模を拡大。
将来的には老若男女が生涯スポーツを楽しめる場を提供したい。
スタッフと共に地域を健やかで、そして元気にするために…。
そんな加藤さんの挑戦の10年と、次の夢とは。

福島にIターン。金融からスポーツの世界へ。

加藤代表はキャリア入社ですが、以前はどんなお仕事を?

はい。出身は秋田県で、仙台の大学を卒業後に金融機関に就職し、営業部や企画部、債権管理部など、多岐にわたる業務を担当しました。勤務地も関東や関西など数カ所を経験し、順調にキャリアを積み、仕事のやりがいを感じて充実した日々を送っていました。しかし、30歳を前に東日本大震災が発生し、これが転職を考えるきっかけの一つとなりました。

学生時代を過ごした東北が被災し、それが人生の分岐点になったと?

その通りです。当時私は京都支社に赴任していましたので、生まれ育った東北の被災地に対して直接的な支援をすることができず、無力感を感じる日々を送りました。その経験から、将来の自分を再考する機会となり、東北の地でやりがいを感じながら自身の力を最大限に活かせる仕事があるのではないかと模索するようになりました。

そんな時にNSGグループとの出会いがあったのですね。

はい。その通りです。NSGグループは教育だけでなく、医療、福祉、スポーツなど、幅広い事業を展開していることを知り、興味を持ちました。そして、採用面接の中で、福島で子ども向けのスポーツ事業を立ち上げる話を聞きました。その瞬間、「これだ!」と確信しました。私は以前よりスポーツビジネスに成長と発展の可能性を感じていましたし、何より福島の復興と地域貢献につながる仕事に携わることは、人生をかけるにふさわしいと感じました。

ご家族は転職・転勤に賛成してくれましたか?

ちょうど第一子の誕生と重なるタイミングであり、福島は子育ての環境が魅力的に感じられました。自然も豊かで生活環境も整備されており、また妻が福島出身であるため、家族全体での転居に賛成してくれました。そのため、福島へのIターンは家族の将来を考えても迷うことなく決断できました。

スクール開設から10年、地域のスポーツ振興に貢献する。

福島スポーツアカデミーの設立当初の話を聞かせてください。

福島スポーツアカデミーを設立したのは約10年前でした。その当時は、大震災とそれに続く原発事故の影響で、子どもたちの体力不足が懸念されていました。そこで、室内で行えるスポーツ活動として、バスケットボールのスクール事業を立ち上げることを決めました。バスケットボールは福島で人気のある競技で、全国的にも競技人口は上位に位置していました。そのため、事業として成立する可能性が高いと考え、バスケットボールを選定しました。

スクールの知名度を上げるためにどのような取り組みをされましたか?

まずは、スクールの理念や内容を広めるために、教育関係者やスポーツ少年団、スポーツ指導者などの方々を訪ね、頻繁にコミュニケーションを取りました。彼らに対して、当スクールの理念(スポーツを通じて子どもたちの健全な心身育成を支援し、地域振興・地域活性化に寄与する)を丁寧に説明しました。また、教育委員会からの許可を得て、学校でチラシを配布していただくなどの地道な広報活動も行いました。これにより、スクールの知名度を上げる努力をしました。

スクールを開校して10年になりますが、振り返ってみての感想は?

スクールを開校してから10年が経ちましたが、更に多くに子どもたちにスポーツの楽しさを伝えていきたいと思っています。振り返ってみると、最初の生徒数がわずか7名ではありましたが、一人ひとりを大切にし、丁寧に接することを心がけました。子供たちには、明確なカリキュラムと指導内容を提供し、さらに、保護者の方々へのフォローやスクールの説明にも、細心の注意を払いました。入会してくれた子供たちは、地域の代表選手に選ばれたり、強豪校のスポーツ部に進学できるようになったりと、素晴らしい成果を挙げています。また、彼らからの紹介や友人の紹介を通じて、新たな生徒たちとも出会うことができました。その結果、今では県内に8つのスクールを展開し、生徒数はバスケット部門だけで200名を超えるまでに成長しました。しかし、私たちにとってこれはまだ通過点であり、スポーツの楽しさを伝えながら、さらにスクール数を増やし、福島のバスケットボールの普及や技術力の向上に貢献するだけでなく、プロアスリートを目指す子どもたちを育成・輩出することを目指しています。

時代・地域ニーズに対応し、スクールの種目を拡充。

その後、チアダンスやマルチスポーツと、新たな種目を導入した目的は?

チアダンスやマルチスポーツなど、新たな種目を導入する目的の根底には「子どもたちの無限の成長を支える」という理念があります。運動能力の向上だけでなく、心身の育成にも力を入れてきました。チアダンスを通じては、チアの精神である「応援する心」や「協調性」の大切さを伝えたいと考えています。また、マルチスポーツでは、専門的な競技に取り組む前に、運動能力や運動神経を基礎から鍛えることで、将来のアスリートとしての可能性を広げることを目標としています。また、時代や地域のニーズに合わせたスクールを提供することも重要な要素です。これらの理念と目標に基づいて、スクールの拡大を進めてきました。

先日新たにダンススクールを開設 されましたが、それも時代のニーズでしょうか?

おっしゃる通りです。ダンスは現在、中学校の必修科目として位置付けられており、2024年のパリオリンピックではブレイキンというダンスが正式種目に採用され注目されています。ダンスは単なる流行ではなく、一般的にも広まっており、レベルの高いダンス教育の環境が求められています。そのため、福島でもハイレベルなダンス教育を提供するために、2023年6月にダンススクールを開設しました。私たちは今後も時代や地域のニーズに合わせたスポーツ教育を広げていくことを目指しています。

事業の拡大や運営にあたって、NSGグループ内での連携もあったそうですね。

はい。例えば、2022年の7月にマルチスポーツスクールを立ち上げる際には、同様のスクールを運営しているジャパン・スポーツ・ラボラトリーからプログラムの提供を受けたり、当法人のコーチの研修を受け入れていただいたりしました。また、チアダンススクールでは、アイ・シー・オースポーツマーケティングとチアダンスのスクールやダンススクールの開設について相談させていただきました。福島、新潟と県こそ違いますが、同じスクールを運営する先輩法人からのアドバイスは非常に心強く、NSGグループのスケールメリットを実感することができました。

将来的には老若男女が生涯スポーツを楽しめる場所に。

スクールの成長において、今後取り組んでいきたいことはありますか?

当スクールは創設当初は小規模でしたが、着実に成長してきました。現在はバスケ、チア、マルチ、ダンススクールを合わせると年内に会員500名を超えてくる見込みです。運営は多くのスタッフが協力し、支え合って行われています。今後もスタッフが成長し、組織を充実させることが重要な課題です。そのためにはスタッフ一人ひとりが、「感謝とリスペクトの精神」を大切にしながら日々行動する。そして壁があっても前向きにチャレンジし、変化に柔軟に対応してトライし続ける。そのようなマインドを持つことが大切です。日常のコミュニケーションや話し合いを通じて、そういった価値観を醸成していくよう心がけています。

これから、どのようなスポーツクラブにしたいと考えていますか?

地域の未来を担う子供たちの健やかで元気な成長をサポートするという思いでこれまで取り組んできました。これからはさらに、大人世代や、シニア世代にも拡大していきたいという想いを抱いています。6月に開校したダンススクールでは、大人向けのフラダンスやヒップホップダンスなどのプログラムを導入しました。多世代型のスクールを具現化するための第一歩だと思っています。そして将来的には、老若男女が生涯に渡ってスポーツを楽しめる福島県でナンバーワンのスポーツスクールになりたい。そして将来的には福島県最大規模の多世代型の総合スポーツスクールとして発展させたいと考えています。地域の人々が集い、会話が生まれ、仲間が増える。そんなスポーツを通じて輪が広がり、繋がるハブ的な存在なれたらと考えています。

順調なキャリアを手放して地域貢献のためにIターンをした選択は正しかったと思いますか?

はい。そう思います。起業してから経験した感動や達成感は他では味わえないものでした。起業したからこその景色を見ることができました。それは、チャレンジ精神を忘れずに取り組んだ結果だと思います。これからもその気持ちを忘れず、スタッフと共に地域の発展に向けて取り組んでいきたいです。人生は一度きりですので、楽しんで日々全力で取り組んでいきます。

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