Iターンで新潟へ。AI開発の現場で、人とAIをつなぐ技術者

株式会社新潟人工知能研究所 / 丁野 友徳
2026.06.26 Fri
PROFILE
丁野 友徳
株式会社新潟人工知能研究所 技術開発部リーダー
高知県出身。大学で数学を専攻し、卒業後は地元のIT企業に入社。官公庁関連業務などを通じてシステム開発の経験を積んだ後、AI分野への挑戦を志し、2023年にNSGホールディングスへ入社。同年、新潟人工知能研究所へ出向し、2024年に同研究所へ転籍。現在は自社で開発したAIを活用した業務改善システムや社内ナレッジ共有システムの開発に携わるほか、(株)日本フードリンクの献立支援AI「Meally(ミーリー)」の開発を担当。NSGグループ内でAI活用セミナーの講師も務め、技術開発と普及の両面からAI活用の推進に取り組んでいる。
AIが急速に進化する中、現場で問われるのは、技術をどう生かすかという視点。
高知県からIターンで新潟へ移住し、AIを活用した業務改善や
献立支援AI「Meally(ミーリー)」の開発に携わる。
AIと人間はどのように役割が分かれるのか。
技術者としての歩みと仕事観を聞いた。

数学をきっかけに広がったAIへの興味

これまでの経歴について教えてください。

高知県出身で、大学まで高知で育ちました。卒業後は地元のIT企業に就職して、官公庁向けの仕事などでシステム開発を経験する中で、「もっとAIに踏み込みたい」という気持ちが強くなっていきました。そんな時に、友人からAI開発に携われる新潟人工知能研究所の求人を紹介してもらいました。これをきっかけに2023年にIターンで新潟へ移住しました。

もともとAIに興味があったのでしょうか。

大学で数学を学ぶ中で、「人間には解けない、複雑すぎる問題」があることに面白さを感じるようになりました。条件が膨大に絡み合う問題は、人間だけではどうしても限界がある。そこにAIの可能性を感じるようになりました。当時はまだ、AIを専門的に学べる環境が身近になかったため、まずはIT企業で開発の基礎を身に着け、その先で、AI分野に挑戦しようと考えました。

給食現場の負担を減らす、献立支援AI「Meally」開発

現在の仕事内容を教えてください。

技術開発部リーダーとして、チームの管理だけでなく自分でも手を動かしながら進めています。主な仕事は、自社開発のAIを活用した業務改善の案件です。社内のナレッジ共有システム開発もその一つで、ベテラン社員しか知らないノウハウやマニュアルをAIで整理し、誰でも必要な情報にたどり着ける仕組みをつくっています。さらに、もう一つの大きなプロジェクトが、献立支援AI「Meally(ミーリー)」です。

「Meally」は、どのようなシステムなのでしょうか。

栄養士の献立作成を支援するAIシステムです。給食の、献立作成では「栄養価を満たすこと」「予算内に収めること」「アレルギーに対応すること」「同じような料理が続かないこと」など、複数の条件を同時に考える必要があります。しかも現場では、一人の栄養士さんが手作業で組み立てているケースも多く、1か月分の献立作成に8時間以上かかるケースもあると聞き、その負担の大きさに驚きました。そこで、AIで献立の土台を自動生成できないかと考え、そこから開発が始まりました。

このプロジェクトはどのような経緯で始まったのでしょうか。

きっかけは、NSGグループの開志専門職大学との量子コンピュータ研究でした。量子コンピュータは条件の多い組み合わせの中から最適な答えを導く「最適化問題」を得意としていて、献立づくりも、その一つです。研究を通じて、この技術は現場の業務に活かせるのではないかと感じました。その後、給食の調理・提供サービスを行う、同じくNSGグループの日本フードリンクの方々と話す機会があり、「AIを活用すれば、現場の課題を解決できるのではないか」という方向で、プロジェクトが本格的に動き始めました。

難しいのは、「感覚」をAIに伝えること

AIを使うことで、どんな変化がありましたか。

一番大きいのは、できることの幅が広がったことです。例えば「Meally」を使用し、作業時間が大幅に短縮されたことで、栄養士のみなさんが力を入れて取り組みたいことや、より良い献立にするための工夫に時間を使えるようになりました。単純作業を減らし、人が本当に必要な仕事に集中できるようになる。それがAIの価値の一つだと思っています。

一方で、難しさを感じることは、どんなところですか。

「Meally」において特に難しいのは、「栄養士さんの感覚」をどうAIに伝えるか、という点です。例えば、「この料理とこの料理は近い日に出したくない」という感覚があっても、なぜかと聞かれると「似た傾向のメニューだから」としか言えないことがあります。そうした経験と勘に基づく判断を、AIが扱える形に整理し落とし込む作業が必要です。一方で情報を詰め込みすぎると、計算量が増え動かなくなってしまうこともあります。「どの情報を、どう整理してAIに見せるか」という設計が、難しさであり、面白さでもあります。

開発を進める上で、心掛けていることはありますか。

あまり手段にはこだわらないようにしています。大切なのは、手段よりも何を目指すのかを共有することだと思います。例えば開発でも、「こういうコードを書いてください」と細かく指示することは少なく、まずゴールを共有する。その上で、どう進めるかは、それぞれの考え方や得意なやり方に任せています。その方が、結果としてより成果につながると感じています。

「まずやってみよう」と言える環境が、挑戦を後押しする

NSGグループで働く魅力を感じるのは、どんなところですか。

「チャレンジに寛容」なところです。「こういうことをやってみたい」と相談すると、「まずやってみよう」と背中を押してもらえる。新しい技術を取り入れる時も受け止めてもらいやすく、アイデアを実際に形にできる環境があることをありがたく感じています。

AIセミナーなども担当されているそうですね。

NSGグループ内外の企業向けに、生成AIの活用支援や人材育成を行っています。AI活用セミナーや勉強会では、生成AIの基本的な使い方から業務への取り入れ方、具体的な活用事例までを紹介し、「自社ではどのようにAIを活用できるか」といった相談に対応しています。
また、最近では「AIを導入したい」だけでなく、「社内でAIを使いこなせるようになりたい」といった相談も増えており、生成AI活用への意識が少しずつ変わってきていると感じています。

今後、AI分野で実現したいことはありますか。

AIはどんどん進化していますが、まだ意図通りに動かない場面もあります。だからこそ、「人の考え方」や「価値観」をより深く理解できるAIを作っていきたいと思っています。ただ答えを返すだけでなく、「この人なら、こう考えるよね」という部分に寄り添えるような技術を目指してこれからも取り組み続けたいと考えています。